9人が本棚に入れています
本棚に追加
未だ幼い雛太を何時もは甘やかし気味の母親も、生き物の飼育となれば最終的に面倒を見るのは自分だと知って、ここは引けないと毅然とした態度を貫き、珍しく母親と言い合ったことで感情が乱れた雛太は、涙を溜めた瞳で将をジッ──と瞶めた。そんな風に瞶められれば、それだけで雛太を邪険に出来ないのが将の常だった。
「……諦めろ、家じゃ飼えないよ」
気持ちを厳しく持ち、可哀想だが捨てて来るしか無いだろうと諭すと、
「こんなに小さくて……ケガまでしてるんだよ?」
半泣き顔の雛太は、仔猫の腹を将へ向け示した。言葉の通り、仔猫の腹に一筋切り傷が見え赤く血が滲んでいた。
「お兄ちゃんお願い、この子のケガが治るまで──」
そんな成り行きで、母親には内緒で仔猫を飼うことになったのだ。
年頃の将は自室を持たせて貰っているが、小学校低学年の雛太は未だ自室を持っていない。夜も両親と布団を並べて就寝だ。依って、仔猫は将の部屋へ匿うこととなった。付き添いのように、雛太も将の部屋で寝るんだとその夜布団を引き摺ってやって来た。
最初のコメントを投稿しよう!