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そして数ヶ月経て、雛太の異変にいち早く気付いたのは、やはりと言うか母親だった。
「あんなに無口な子だったかしらね……」
ガーデニングが趣味の母親が、土で汚れた手袋をバケツへ投げながら、縁側で寝転んでいた将に話かけた。
「お喋りな子では無かったけど、あんなに何考えてるんだか、分かんない子じゃなかったわ」
母親が言うには、話掛けても冷たい眼差しで只ジッ──と瞶め返して来ることが多くなり、言葉も通じないかのように感じさえするのだと。加えて最近では夜遊びも覚えたようで、驚くほど遅くに帰宅することもあると言う。
「来年は四年生だろ? お年頃なんじゃね?」
一時的なことだが将にも覚えが有る。ある日を境に、急に親と距離を取りたくなり、必要以上の接触を拒んだ経験も有った。
気に病んだ母親に、『そろそろ部屋でも持たせてやれば』と提案した将は、自分の部屋にリフォームが入り、二分割されて狭くなるのを覚悟した。
しかし将には母親が心配するほどの異変も感じられず、雛太は夕食後、何時ものようにこうして将の部屋へ来て腹這いになって漫画を読んでいる。
異変は無いものの、仔猫を隠していた時のまま雛太は将の部屋で寝るようになってしまった。これには多少の不具合があった。
ベッドの下とは言え、雛太が傍にいると思うと調子の悪いことがあったのだ。
特にこんな夜は──
休日の昼間、昼食後の転寝が過ぎたか、この夜将は寝就きが頗る悪く、布団の中でもじもじしている内、すっかり萌してしまっていた。
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