ラブリー・スノー・ホワイト

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 ***  白雪姫を連れ戻せなかったお妃様を、王様は大層責めた。ひっくり返って泣きわめきながら責めた。ああ、なんでこんな男のところに嫁いじゃったんだ私、と悔やんでも仕方ない。玉の輿に乗れるぜひゃっほう!とテンション上がって王様の人格を度外視してしまったのは自分なのだから。 『お前の価値は、白雪姫の母親になることだぞ!それ以外に価値なんてない!そうじゃなかったら誰が、お前みたいな年増を妻になんかするものか!白雪姫の方がずーっと美しいだろうに!』  王様に言われた言葉が、胸に突き刺さっている。年を取っていて、白雪姫ほどの美しさもなく、母親にもなれない自分に価値なんてない。改めてそう言われると、流石にショックは大きかったのである。  没落貴族の娘だった自分に、やっと巡ってきたチャンス。これで自分の家も救われ、今までの惨めな生活から解放されるとばかり思っていたのに。何故、これまでの苦労も苦しみもなかったように、己の存在そのものをあんな男に否定されなければいけないのだろうか。 『いい、カミラ。貴女は我がジュミランド家の最後の希望なの……!』  老いた母に託された、お守り変わりのネックレス。鏡の中、空しく赤い光を放つそれをお妃様はぎゅっと握りしめたのだった。 ――わかってたわよ。本当の私のことなんて……誰も見てくれやしないってことくらい。  本当に、自分は何をやっているのだろう。たくさんの化粧と魔法で死ぬ気で美貌を保ち、王国に役立つためにたくさん政治の知識を学び、白雪姫のことも散々調べて嫁いできたのに。一体自分は今何のために城にいて、何のために一人でさびしく鏡を見つめているのか。 ――白雪姫。あいつが、私に懐いてくれれば。全部あいつのせいだわ……!  お妃様の中に、ふつふつと怒りが沸き起こった。なんとしてでも、ギャフンと言わせてやらなければ気が済まなくなったのである。
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