ラブリー・スノー・ホワイト

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 ***  散々だった。またしても失敗したお妃様に辛辣に当たる王様。しかも、形見のネックレスを忘れてきたことに後で気づいたのだからどうしようもない。  そう、落としたのではなく、忘れていったのだ。  万が一落としたらまずいと思って、途中まで乗ってきた馬に貴重品一式を置いていったのである。そして、そのままうっかり徒歩で逃げかえってしまったので、ネックレスはもちろん馬ごと大事なものをゼーンブ森に置き忘れていってしまったのだった。大失態である。  ひょっとしたら、白雪姫に自分の正体がバレたかもしれない。少なくとも馬は、猛獣の餌になっていてもおかしくないだろう。 ――最悪……。  最悪だが、もう一度行くしかない。幸い、毒入り林檎は落として来ないで済んだ。多少追及されても、まだ誤魔化しはきくだろう。というか、そうだと信じるしかない。  どんなに嫌でも、苦しくても、悲しくても。自分はこの城にいなければいけないし、王様が言う通り娘を取り戻しに行かなければいけないのだから。 「……もしもし」  お妃様は、翌日、再び毒入り林檎を持って七人の小人の家に向かったのだった。すると、今日は家の様子がどこかおかしい。小屋の隣に馬が繋がれているし、小屋の中に小人たちの気配がない。  代わりに家の前に椅子を出して待っていたのは、白雪姫その人であったのだ。 「あ、来た!」  白雪姫は、おばあさんに変身したお妃様を見ると、パタパタと駆け寄ってきたのだった。 「昨日、お馬さん忘れていったでしょう!?お財布とかハンカチとかも」  それから、と彼女はポケットからあの赤い石がついたネックレスを取り出す。 「これ!貴女のものだよね?大事なものなんでしょう?」 「貴女が、拾ってくれたの?」 「うん!大丈夫、熊とは和解したからもう来ないよ!」  和解したんだあの状況で、とやや遠い目をしつつ。お妃様はネックレスを受け取った。  そして、お妃様が林檎の籠を差し出すより前に、白雪姫が言ったのである。 「私を連れ戻しに来たんだよね、カミラさん」
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