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相変わらずケイは真面目に仕事をしている。
新人の内は何かと忙しいのだ。
今日もいつも通りと思っていると、研究所用の携帯電話が鳴った。
携帯電話と言っても、インカムタイプで、また小型化もしている。
もちろん着信音も耳に優しい音楽と音量になっていて、ケイは最初こそ驚いたが、今では作業の邪魔にならない携帯電話を重宝している。
マイクの近くにある通話ボタンを押して通話モードにすると、明瞭な声が聞こえてきた。
『もしもしケイくん?』
「もしもし所長?今日は出かけているんじゃなかったですか?」
『そうなんだよ。で、持っていく予定だったアンプルを忘れちゃってね。悪いけど持ってきてほしいんだ。僕の部屋には入れるようにしておくから、センサーの虹彩チェックをしてね』
「はい」
通話を終えてから、ケイは小走りで所長室に向かう。
所長は滅多に所長室から出てこないが、急な呼び出しがかかることもあるので、所長室のセキュリティは厳重にしている。
センサーでチェックがOKでも、所長の許可がなければ、所長室には入れないのだ。
ケイは虹彩チェックを済ませると、所長が忘れていったと思われるアンプルが二つ入ったケースが机の上にあったので、それを持ち所長室から速やかに退出した。
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