忘れ物を届けに…

2/4
前へ
/15ページ
次へ
相変わらずケイは真面目に仕事をしている。 新人の内は何かと忙しいのだ。 今日もいつも通りと思っていると、研究所用の携帯電話が鳴った。 携帯電話と言っても、インカムタイプで、また小型化もしている。 もちろん着信音も耳に優しい音楽と音量になっていて、ケイは最初こそ驚いたが、今では作業の邪魔にならない携帯電話を重宝している。 マイクの近くにある通話ボタンを押して通話モードにすると、明瞭な声が聞こえてきた。 『もしもしケイくん?』 「もしもし所長?今日は出かけているんじゃなかったですか?」 『そうなんだよ。で、持っていく予定だったアンプルを忘れちゃってね。悪いけど持ってきてほしいんだ。僕の部屋には入れるようにしておくから、センサーの虹彩チェックをしてね』 「はい」 通話を終えてから、ケイは小走りで所長室に向かう。 所長は滅多に所長室から出てこないが、急な呼び出しがかかることもあるので、所長室のセキュリティは厳重にしている。 センサーでチェックがOKでも、所長の許可がなければ、所長室には入れないのだ。 ケイは虹彩チェックを済ませると、所長が忘れていったと思われるアンプルが二つ入ったケースが机の上にあったので、それを持ち所長室から速やかに退出した。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加