【1000円札】

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「お母さ〜ん!!」 文子と悟の愛娘の彩乃が文子に泣きついてきた。 「どうしたの?」 既に小説家を引退していた文子は温かいココアを飲みながら、彩乃に訊いた。 「また、男子達が私に群がってきて困るのよ……」 彩乃は半泣きになりながら、そう応えた。 彩乃は……文子も、そこそこの美人であったが、それに上回る容姿端麗な悟に似た超絶美人であった。 「もう!!男なんか嫌い!!!」 と中学二年生になる彩乃はセーラー服を脱ぎながら、そう叫んだ。 すると〇日新聞社を退社しエッセイストになっていた悟が、自室から出てきて、 「どうした?彩乃……」 と、声を掛けた。 部屋着に着替え終わった彩乃は悟を冷ややかな目で見つめると、 「……お母さん。なんで、あんな、お父さんと結婚したの?」 と文子に訊ねた。 「なんでって……」 文子は悟に目を向けると、文子と悟は同時に吹き出して笑った。 「何よ?……お母さんも、お父さんも!!」 彩乃は頬をプックリと膨らまして怒って見せた。 「な、文子……あれ、彩乃に渡してもいいよな?」 「……ああ、あれね?いいわよ?」 すると悟は古ぼけた神棚へ行き、古ぼけたあの……角がちぎれた『1000円札』を手にして、彩乃に渡した。 「何?これ?……古い1000円札じゃん。しかも角がない……」 彩乃が不思議そうに、渡された1000円札を眺めていると文子は、 「それがね?……私と、お父さん……悟と引き合わせてくれたのよ?」 と言った。 「へ?」 訳が分からない……といった表情を浮かべた彩乃。 そんな彩乃の頭を悟が撫でながら言った。 「今は分からなくていい。……いつか必ず……その1000円札が、彩乃の運命の人と引き合わせてくれるさ」 と悟はそう言って、文子にウィンクをした。 【END♡】
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