出会い

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叔母が好きな俳優の高○克典に似たおじさん 車は走り始めたと思ったら僅かな距離で止まった 「ちょっと寄り道」 「ん?」 「すぐ戻るから 鞄は持って来なくていいよ」 そう言って車を降りた目の前には 有名なブランドショップがあった 「さぁ、行こう」 肩を抱かれたまま脚を踏み入れたそこは、ハイブランドが並ぶ店 「いらっしゃいませ、青野様」 綺麗な店員さんの出迎えを受け ディスプレイを眺めること数秒 プライスカードの桁の多さに興味を失くしたのに 「食事に行くから適当に合わせて」 肩を押されたのは私だった 「かしこまりました、お連れ様こちらへどうぞ」 ・・・は? 「ちょっと、何、どういうこと?」 「どうって、俺からのプレゼントだよ」 ・・・意味が分からない 「着替えが必要な店なら帰ります そもそも乗り気じゃなかったし それに、適当って何? 着せ替え人形じゃないんだけど」 大人の誘いに乗った癖に瞬時に苛立つところなんて子供丸出し それに気付く間も無く不満は一気に溢れ出た シマッタ・・・と思った時には 店員さんとおじさんは鳩豆顔で固まっていて ・・・ヤバい 逃げ出そうと踵を返した途端 「おっと、帰っちゃダメだよ ・・・威勢が良いなぁ」 強く腕を引かれ 「キャッ」腕の中に羽交い締めにされていた そればかりか後頭部に添えられた手に引かれて おじさんの顔が近づくとフワリと唇が重なった 「・・・っ!」 腕の強さと裏腹な優しいキスに 驚きすぎて瞬きも抵抗も忘れる 「は、なして」 胸を押して離れると、店員さんは全員背を向けていた 「またにする」 連れてきた割にアッサリと諦めたおじさんは 「制服でも良い店にするよ」 キスしたことなんて忘れたみたいに笑った 「私、帰ります。送って下さい」 踏み入れたかった大人の世界は 私にはまだ早かった それに気付いたのに 「お嬢と食事したいんだ、今日だけ」 真っ直ぐ向けられる視線から逃れる術なんて持ち合わせてはいなかった
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