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「それではアイリス、やってごらん」
もう一度セフィロスは自分の腕を切り付けて、アイリスの方へ差し出してきた。
ドク、ドク、と心臓が脈を打つ音が聞こえる。目の前に傷付いた腕があるせいなのか。いや、それ以上に別の不安がアイリスを襲っていた。
――もし、出来なかったら?
またフレアやリアナが、困った顔をするかもしれない。生まれてから何度も、そんな顔をさせてしまった。やっと2人の間に生まれた子だと言うのに、申し訳なくて居た堪たまれない気持ちになる。
「アイリス、例えできなかったとしても何も恥じることはない」
心の中を見透かしたかのようなセフィロスの言葉に、アイリスはハッと顔を上げる。
「フレイとリアナの事を考えていたのだろう。違うか?」
「いえ、その……はい」
「あの2人のことなら気にする事はない。そもそも癒しの力を使えないことで落胆したりなどしない」
「でも私はこれまでずっと、お2人の期待に沿うことができずにいます」
何で上手く神気を使うことが出来ないんだろう。魔物を倒すどころか武器にも触れず、生臭物も食べられない。
さらには神気を抑え込むのも苦手ですぐ漏れ出してしまう。だから会議に行く時も、ヒュドラの抜け殻が編み込まれたローブを来て行ったのだ。
「もしあの2人が期待をして失望したのだとしたら、それはあちら側の勝手というものだろう。其方に落ち度があったからでは無い」
「でも……」
セフィロスが言っている事は分かるが、期待に応えることが出来ないというのは苦しいし辛い。
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