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3. 練習
アイリスが生まれてから翌日、本番前の練習に、とフレイが生きたヘルハウンドを連れてやってきた。
本番と言うのは、神が生まれてから1週間内に行う「披露目の儀」の事だ。
アレクシアに教えて貰ったことによると、披露目の儀は招待者を呼び新たな神の誕生を知らせ、みんなでお祝いをするらしい。それまでは自分が生まれた事は、神殿の使用人にすらも秘密。部屋から出てはいけないと言われた。
それともう1つ、神としての力を見せる場でもある。
どうするのかと言うと簡単だ。魔物を招待者の目の前で殺せばいい。
力の強い上位の神はそれだけ強い魔物を、下位の神なら倒せる程度の魔物を用意して行われる。
フレイが連れてきたヘルハウンドと言われる魔物は、全身が真っ黒で、血のように赤い目をした犬のような見た目をしている。敏捷そうな体つきと巨大な牙と爪は、いかにも狙った獲物は逃がさない、と言っているようだ。口からは硫黄のような嫌な匂いがしていた。
「ヘルハウンドと言っても、まだ幼体だからね。君くらいの神気の持ち主なら大したことないよ」
「確かあなたより一つ下の階級の砂の神や冬の神も、披露目の儀でヘルハウンドを使ったんじゃなかったかしら」
恐怖で顔が引き攣るアイリスに、フレイとリアナは気楽な様子で話しかけた。
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