48人が本棚に入れています
本棚に追加
偶然の出会い
俺の名前は霧島 蓮博多支店勤務 25歳
博多支店へ転勤になって2年、年に3回程本社へ出張に行く。
わざわざ出向かなくてもリモートでもメールでも今やネットを利用すれば不必要な経費も削減できるのに・・・・
そう思いながらもたまの出張はいい気晴らしになる、実家も東京なら最初の勤務地も東京本社だった・・・・・出張ついでに大学時代の友達と飲んだりする時間ぐらいはもてる。
今日もいつものように福岡発8:25JAL304便 東京着9:55座席A-1。
搭乗してすぐに通路を挟んだ席にいる横顔の綺麗な男が目に留まる、小さな顔にすっきりとした鼻、少し長めの髪、姿勢を正して目を閉じていた。
スーツを着ているからサラリーマンだろうとは思うが、それにしても綺麗な男だった。
自分が女性には興味を持てないマイノリティだと気が付いたのは中学の時だった、告白してくる女子たちに嬉しい気持ちはあっても付き合う事に違和感があった。
付き合って何をする?手をつなぐとか・・・・抱き合うとか・・・・・キスをするとかそんな気にはならないと思った。
それよりも男同士で話したりふざけたり・・・・そう言った事の方が楽しいと思えた。
入学してすぐに3年の部活の先輩に恋をした・・・・・剣道部の先輩・・・・・背筋を延ばし竹刀を持つ姿に胸がときめいた。
毎日が楽しかった・・・・かといって先輩に気持ちを告げる気はない、ただ側にいてみているだけで満足した・・・・・その気持ちが恋だと知っていた。
誰にも言えない知られてはいけない恋心・・・・・・男が男を好きになることへの罪悪感。
そんな自分への嫌悪感もあった・・・・・・だがそんな自分に母が気が付いていってくれた。
「蓮 誰が誰を好きになっても間違いなんてことはないの、男だって女だって同じ人間たまたま好きになったのが男でも少しも変じゃない・・・・・女の子を好きだと思えなくても、なにも悪いことじゃない・・・・・犬の好きな人もいれば猫が好きな人もいるでしょ・・・・・犬も猫も嫌いな人もいる。それで何も不思議じゃない、あなたが女の子よりも男の子に好感を持ってもいいの、自分の気持ちに素直になって・・・・・・ただ・・・・誰でもが同じ考えではないからあからさまな行動は控えたほうがいいかもね」
母の言葉は自分に勇気と誇りをくれた・・・・・・男を好きになることは異常ではない、自分は普通なのだと思えた。
綺麗なものなら花でも虫でも蝶でも好きだと思う・・・・・それと同じなのだと思えた。
東京到着まで後1時間・・・・・本社の担当者へメールを送ってパソコンを閉じると同時に通路を挟んだ横にいる男を見るとパソコンを開いて入力中・・・・・やっぱりサラリーマンらしい。
その男がパソコンを閉じたのを見て自分のパソコンを開く・・・・・さっき送ったメールに返事が来ていた。
早い・・・・・・すぐに返事を書いてEnterを押す。
と同時に彼を見る・・・・パソコンを開いてキーを叩いて入力・・・・・パソコンを閉じて目を閉じた。
それを見て自分のパソコンを開く・・・・・・メールの返事が来ていた・・・・・・偶然にしてもまるで隣の男とチャットしている気がしてくる。
返事を書いてまた送信・・・・・と同時に隣の男へ視線を向ける・・・・・・すぐにパソコンを開いてキーを叩く。
自分のパソコンを開くとメールが来ていた・・・・・・まさかな・・・・
確かめるためにまたメールを送る、仕事の話は終わっているのでどうでもいいような内容のメール。
送ってすぐに彼を見るとまたパソコンを開いて、少しだけ笑った。
入力してパソコンを閉じたのを見て自分のメールをチェック・・・・・・やり取りが楽しくなって口元がほころぶ。
もう一度今度は確信を持って福岡発8:25JAL304便機内であること座背番号A-1を告げた、返信がすぐに来た・・・・・
自分も同じ便である事座席番号D-1・・・・・・・
それを読んで横を向くと彼もこっちを見ていた・・・・・・にっこりと笑う彼が胸の所で小さく手を振った。
最初のコメントを投稿しよう!