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親しい友でいい
見惚れた男に手を振られて、気分は一気に昂る!
自分も思わず小さく手を振る!
明るい笑顔で見つめられ、すぐにメールを送信。
はじめまして福岡支店セールスエンジニアの霧島 蓮25歳です、これから東京本社出張です!
すぐに返信が来る。
始めまして、東京本社フィールドセールス村上 朝陽30歳です、福岡支店から本社へ戻ります!
到着後は社へ顔出しですか?
良かったらその前にランチでも?
了解です!
返事をもらってまた彼の方を見ると、向こうもこちらを見て親指を立てる、同じように親指を立ててにっこり笑う!
これまでも高校大学と見惚れた男は沢山いたが彼ほどの男は初めてだった、男前なのににやけているわけでもなく愛想が良くて感じがいい、女にも男にもモテそうだと思った!
羽田に到着して2人して顔を見合わせる、さっきのメールのやり取りですっかり友達気分だった。
羽田からはリムジンバスで新宿へ、朝食抜きだったためにランチはしっかり肉を食す!
村上 朝陽は細い身体の割に結構食った、そんなところも親しみを感じる、5歳年上という感じがしない、むしろ可愛いと思ってしまう
連絡先を交換して二人揃って銀座にある本社へ、そこからはそれぞれの部署へ挨拶と報告!
とりあえず今日の仕事が終わったところで村上 朝陽にメールをする。
仕事終わったから、1階で待ってる!
しばらくして返信が来た。
少しかかりそうだけど、待ってて!
了解!
そんなメールのやり取りさえ嬉しい、飛行機の中で初めて会ったのにもうすっかり仲のいい友達になったような気がした!
これまでちゃんと付き合うということをしたことが無い、いつもそばで友達として見ているだけの関係だった、勿論友達だから学校の帰りに食べに行くとか 飲みに行くとかはやった、でもあくまでも友達として!
自分の気持ちをあからさまに表すことも伝えることもしたことはなかったし、2人だけで出かけるとか酒を飲むような事もしたことがない!
母に言われた「みんながそう思っているわけではない」という言葉が常に自分を戒めていた。
もし誰かにこんな自分のことがバレたら、きっとみんな離れていく・・・・・
だから、このまま友達であり親友のままでいいと思っている!
SEXがしたかったら、それなりの相手を一夜限りの相手として探せばいい、その方が後腐れもなく安心だった!
親しい友人とは仕事の帰りに飲みに行ったり食事をして愚痴を言ったり、彼女の話を聞いてやったり・・・・・・それでも自分のプライバシーを話すことはなかった!
理解してもらえるかどうかがわからない相手に余計なことを話して、仕事がしづらくなっては元も子もないと思ってしまう!
社内では女子社員にモテる仕事のできる男と評判だった、告白してくる女子もいる!
それとなく今は仕事が大事と断るようにしていた。
このまま一生一人でも構わない、自分を理解して愛してくれる人が現れる事などあるはずがない、それならばずっとこのまま独身貴族として過ごす覚悟はできていた!
結婚をしない理由を聞かれたら、出会いがないとか心から思える人に出会わないとか適当に答えておけばいい・・・・・自分を誤魔化して女性と結婚をする気はない!
そう思っている!
村上 朝陽と知り合ったのは、自分にとって今までにない幸運と思わずにいられなかった!
男としての魅力が充満している理想の男、そんな男と知り合いになれて食事をして、仕事が終われば飲みに行く、こんな関係がずっと続けばいいのにと思った!
恋愛感情を持った密な関係など望んでいない、ただこうやって約束して逢って酒を飲み食事をして話をする、そんな時間が楽しみだった!
「かんぱーい」
会社の駅近くの居酒屋で二人でビールジョッキを合わせて、乾杯。
「お疲れ様でした」
「お疲れ~」
ビールをグビグビと半分近く豪快に飲み、口に泡をつけたままプハーと息を吐いた!
村上 朝陽がテーブル越しに手を伸ばしてきて、ネクタイを引っ張られて前屈みになる。
間近にある顔にドキリとして目を剥けば、あの顔でニッと笑った。
男同士でこんなに顔を近づけることなんか、普通ない。
「また、飲みに行こうな」
「……オゥ」
また・・・・・
そう言った、酒と飯だけでも嬉しかった!
出張が終わって福岡に帰ってからも、何度もメールをして夜時間があると電話をした!
こんな事をする友達は初めてだった、時間があればメールをして電話をする・・・・・・・まるで恋人同士のようにメールや電話が来るのを待つ自分がいた!
くれば嬉しい、来ないと不安になる。
電話で声を聞けば胸がドキドキとして浮かれてしまう、それでいて話は尽きない!
大学生のころ告白されてなんとなく付き合った女性がいた、初めの頃はメールが来るとすぐに返事を返した、そのうちめんどくさくなって既読無視、その後はメールが来ても放置した自分もいつかそうなるのだろうか?
あの時の彼女の気持ちが今やっとわかった!
きっとこんな気持ちは自分だけだろう、それでもかまわない・・・・・
村上 朝陽の中で自分の存在がただの同僚だろうとそれでよかった!
彼のことが好きだ、だからと言ってこの関係を壊す気はない!
村上 朝陽が結婚するまで、それまでの付き合いでいい・・・・・・そう自分に言い聞かせた!
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