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秘めた思いが溢れ出る
メールや電話は毎日した、当たり前のように今日は何があったとか、仕事が終わってこれから帰宅するとか、食事はコンビニの弁当・・・・・などとたわいもない事をメールで報告し、風呂に入ったらビールを飲みながら電話!
何もかもが当たり前のように会話とメールが続いた。
逢いたかった・・・・逢って近くで朝陽を感じたかった、そんなことをすればますます気持ちが抑えられなくなるとわかっていても、顔を見て話したかった。
だからと言って理由を探して東京まで行くのは怖い、もし仕事だと言われたら、誰かと飲みに行く約束があるとそちらを優先されたら・・・・・・
つまらない事を考えて結局逢いに行く勇気はなかった。
そんな自分の気持ちに気がついたように朝陽から、博多の町へ行ってみたいとメールが来た!
福岡は出張で来てもホテルと仕事だけで観光した事も屋台で飲んだり食べたりした事もない、だから今度の連休に行こうかな?そう書いてある!
すぐに返信した。
<来いよ案内する、夜は博多で屋台にも行こう>
<行く 行きたい 楽しみにしてる>
<ホテルは取らなくていいようちに泊れば>
<うん そうさせてもらう>
とんとん拍子に話が決まって、次の週に朝陽は福岡に来た。
空港まで迎えに行くと、ブルーのTシャツにジーパン、黒のバックパックに黒いキャップを被った朝陽が出てきた。
俺の姿を見つけて大きく手を振った。
「朝陽!」
思わずそう呼んでいた。
にっこりと笑った顔が眩しいくらいに輝いていた!
急ぎ足でそばまでくると「久しぶり~」と言いながらハグをする朝陽。
外国人がやるような軽い気持ちのハグだったのかもしれない・・・・・
でも、俺には刺激が強い。
すぐに身体を離して何もなかったような顔をして「3ヶ月ぶりか?相変わらず元気そう」
車を走らせて太宰府天満宮や海の中道海浜公園とかありきたりの観光地を周る、途中ランチを食べてはまた話に花が咲く、顔を見て話せるのが楽しかった。
嬉々として話す朝陽はじっと目を見て話す!
彼の癖なのだろう、営業マンとして相手に訴える様な話し方
だからこそ営業トップの成績を維持しているのだと思った!
見つめられている様な気がして胸がときめく
夕方になって車と荷物を部屋に置いて、電車で中洲へ出た!
ずらりと並んだ屋台の中から博多ラーメンが食べたいという朝陽の希望でラーメンを食べた、10人も入ればいっぱいの狭い屋台の中で、知らない客ともすぐに仲良くなる。
知らない同士で乾杯をして、賑やかに話が弾む、親しみを感じる博多弁が気持ちよく耳に優しい!
みんなで記念写真と称してスマートフォンで何枚も写真を撮る!
屋台の店主も一緒だ!
女性客達に「2人ともいい男ばいね」と言われてにっこり笑って思わずお互いの顔を見る。
食べて飲んで喋って、賑やかな夜がふけていった。
マンションへ着くと心地の良い酔いと疲れで風呂は明日にして寝ることにした!
「朝陽は俺のベッドに寝て、俺はこっちのソファーベッドに寝るから、アッ俺さっきから朝陽って呼んでるけど、いい?」
「勿論いいよ、俺も蓮って呼ぶから。
蓮がベットに寝てよ」
「いいって、こっちに来てからしばらくはこれに寝てたから、遠慮すんな」
「じゃぁ一緒に寝る?」
「狭いだろ、遠慮しなくていいから」
「わかった、ありがとう」
朝陽は気楽に一緒に寝ようなどと言う、屈託のない性格が今の自分には恨めしくさえ思える。
翌日は午前中は部屋で過ごし午後から出かけてランチを食べてぶらぶらと時間を過ごして最終便で帰る朝陽を空港まで送る予定。
午前中に風呂に入って軽くパンとコーヒーで朝食にする。
「そう言えば蓮はもうこっちへ来て3年?そろそろ転勤かな?」
「多分そうなるかも、3年がだいたい任期だから」
「東京に帰ってこないかな~」
「どうだろうな、サラリーマンなら言われた場所に行くしかないからな」
「独身のうちは気楽でいいけど、結婚してる人は大変だよ」
「そうだよな、奥さんや子供の事情もあるだろうしな」
「蓮は彼女は?」
「今はいない、2年前ぐらいに別れた」
「なんで?お前優しそうなのに」
「合コンで告られて-・・・・付き合ったんだけど、だんだんうるさくなってさ、メールの返事が遅いだの、電話しても折り返さないたの言われて、言い訳するのめんどくさくなって・・別れた」
「ふーん、そりゃ怒るわ
俺だってそんな奴とは別れる」
ってまぁ俺と似てるけど。
「なんだよ、お前はどうなの?彼女」
「俺はいない、まだいいや」
「お前ならメールの返事もすぐするし、電話もかけ直してくれそうじゃん」
「お前からのメールには速攻返事してるもんな」
「返信しなかったら殺すから」
「なんだそれ、怖いよマジで」
お昼を食べてのんびりと大淀公園のカフェテラスでコーヒーを飲む!
「なぁ蓮は東京へ帰ったら実家?」
「いや、実家は八王子だから通勤するには遠い、どっか探すつもり」
「なら、俺のいるマンションに空きがあるみたいだから、そこにしたら?」
「そうなんだ、高円寺だったよな、通勤にも便利だしもし転勤になったらそこにしようかな?」
「東京に決まらないかな~」
「・・・・・・・」
朝陽は本当に楽しみにしている様だった、それがどんな気持ちで言ってるのか・・・・・・自分と同じ気持ちならいいのに・・・・・・ついそんな事を思ってしまう。
最終便で帰る朝陽を姿が見えなくなるまで手を振る。
空港を後にした瞬間押さえ込んだ思いが堰を切ったように溢れ出た!
次の日からまた当然の様にメールと電話が続いた!
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