48人が本棚に入れています
本棚に追加
追い詰められて、それでも好きな気持ちは変わらない
それから3ヶ月後予想通り、転勤が決まった。
東京本社営業部。
朝陽と同じ部署だ。
朝陽からすぐにメールが来た。
<おめでとう、東京だったね!マンション同じとこでいい?>
<ありがとう、来週行くからそこ押さえといてよろしくお願いします>
そう言ったものの同じマンションに住めば当然朝も一緒に通勤、帰りも同じ場所へ帰ることになる!
同じ営業でも、仕事の内容は違うから顔を合わせる機会はそうないかもしれない。
彼の場合はフィールドセールス(外勤営業)で訪問型の営業を行う営業マン、新規や既存にかかわらず、営業活動の多くを会社の外でやる。
自分はセールスエンジニア。
営業活動のサポートする業務内容によっては、セールスサポートと呼ばれる場合もあるデータ管理や契約内容の提案、導入するシステムやツールの選定、営業戦略、売上予測、トレーニング、営業マンのパフォーマンス管理など、幅広い。
東京へ行って朝陽のマンションの隣の部屋を契約した!
こんなに近くに住んでこれから先もし朝陽に彼女が出来たら、結婚して隣に住むことになったら・・・・・
嬉しそうな顔でおめでとうと言えるのか?
隣の部屋で朝陽が彼女を抱くところを想像する事になる。
彼女の服を脱がせ柔らかな胸を愛撫する朝陽、唇に優しくキスをして裸で激しく抱き合う2人・・・・・
胸をかきむしられる様な苦しさに耐えられるはずがない!
それならむしろ、朝陽に気持ちを打ち明けて拒絶された方がまだいい!
顔も合わせなくてすむ、結婚式に招かれることもない、おめでとうという必要もなくなる!
朝陽に彼女が出来たら、その時は告白して友達という関係を終わらせよう!そう決めた!
朝は必ず朝陽が声をかけて一緒に出社する、お昼は時間が合えば一緒に食べる、退社は仕事の内容によってずれることも多いけど、結局朝陽が終わるまで待っててくれるので一緒に帰る事が多かった!
朝陽は部屋で料理を作るからと晩ごはんを誘ってくる、朝陽の手作りは掛け値無しで美味しい!
つい、誘われるまま甘えてしまう自分・・・・・
どんどん追い詰められていく様な息苦しさを感じた!
少し彼と離れてみようと朝も自転車通勤に変えて、帰りも残業をするから一緒に帰れないと伝えた。
少しずつ距離を置いて他の同僚と変わらない付き合いまで持っていこう・・・・・
それでも朝陽は何かと話しかけてくた、休憩室でも俺を見かけると今までと変わらず話しかける。
俺が避けているとは思っていないのだろう、朝陽を避ける自分に心が痛んだ!
その日、朝から朝陽の視線を感じた、お昼になって外に食事に出た俺を朝陽が待っていた。
「今夜部屋に来てよ、一緒に鍋しよう たまには付き合え」
朝陽の表情がいつもと違って断れなかった。
「わかった、ビール買って行く」
「うん、待ってる」
朝陽を避け始めて2ヶ月が経っていた。
ビールを買って部屋で風呂に入って隣の朝陽の部屋へ行く、部屋へ行くのは2ヶ月ぶりだった。
ドアのチャイムを押すと「開いてるよ」と言う朝陽の声・・・・・・
部屋のテーブルには卓上コンロと皿やお箸が準備されていた!
「もうできるから待って」
「ビール冷蔵庫に入れとく」
「うん」
煮えたつ土鍋をコンロに置いて火をつける、温かな美味しそうな匂いが立ち込めて、思わず声が出た。
「ワァ~久しぶり鍋なんて最近食べてないな~」
「ほんと?良かった」
「でも、1人なのにコンロや土鍋持ってんだ」
「蓮が東京に来るってわかってすぐに買った、すき焼き鍋も買ったよ」
朝陽は俺と食事するのを楽しみにしてたんだ、ごめんな!
「すき焼きか~すき焼きの時は俺が極上の牛肉買うよ」
「うん、よろしく!食べよ」
2人して熱々の鶏鍋を食べる、白菜や太ネギ、生椎茸、エノキ、シメジ出汁が効いて凄く美味しい。
「この後雑炊にするから」
「いいね~雑炊大好き」
卵がたっぷりの雑炊でお腹いっぱいになった
やっぱり一緒に居るのは楽しかった・・・・・・・
最初のコメントを投稿しよう!