ふたりの……

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ふたりの……

やばいぞ、と将一郎は思い始めていた。 さっきの朝食のソースのはなしといい、いまといい、園子を自分色に染めるどころか、園子の独壇場ではないか?  このまま将一郎の着る服や趣味や仕事にまで口を出されたら――― 「掃除が終わったら、将一郎さんの服を買いに行きましょう」  来たな、と将一郎は身構える。 「なんでですか? 充分足りるだけ持ってきているし―――」 「少し数が少ないと思うんです。それに……将一郎さんの服装は、センスはともかく若すぎます。あなたももう四十五なのですから、もう少し大人な装いを―――」 「園子さん、園子さん!」  将一郎は脚立から降りると、園子の両手を握った。そのまま、園子の背中まで抱きしめた。 「園子さん、もう全部自分で決めなくていいんです。僕のことは、僕が決めますから」  将一郎の腕のなかで、園子は小さく、はい、と頷いた。 「掃除が終わったら、夕食の買い出しに出かけましょう。僕、メインで作りますから、園子さん手伝ってください」  園子はなにか言いたそうにしたが、結局 「はい」  と了承した。 「それから、ケーキも買いましょう。園子さん、なんのケーキが好きですか?」  園子は頬を赤く染めて 「生クリームに苺の……」  と口ごもる。 将一郎はにっこり笑って 「良かった。意見が合いましたね。僕もそれが一番好きです」  と言った。  やがて、掃除を終えて、身支度をしたふたりが部屋を出てゆく。 繋いだその手には、真新しいシルバーの指輪が光っていた。 〈おしまい〉
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