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青女は舌打ちをすると鞄を掴んで廊下の方へと歩き始めた。
「ごめんね、ユキちゃんが」
背の高い梅雨が身を屈めてこっそりと謝る。
“天泣 梅雨”、その名はおれと同じで雨を連想させるが、彼は心地良いひだまりの様に優しい。
おれなんて“時雨 紫陽”と名が体を表し過ぎていて笑えない。
「梅雨が謝ることじゃないだろう。それに、青女があんなことを言うのにはきっと理由があるんだろうし」
おれが雨男であることは随分前にこのふたりにはバレてしまった。
その上で青女は──
「おい、お前たち何をボサッとしているんだ?」
決しておれを仲間外れなんかにせず、遊ぶ時だって室内で楽しめることを率先して提案してくれる。
そんな彼だからきっと何か理由があってあんなことを言ったのだろうが、それが何かは分からない。
すると梅雨がまた囁く。
「ユキちゃん、体育祭で好きな人にかっこいい所を見せたいんだよ」
好きな人?? 初耳なので詳細を知りたかったのだが、早くしろと苛立った声で言われてその機会を失ってしまった。
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