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第三話(足音)
梅雨の時期。
専門学校の授業が終わってアパートに帰ってきた。通学に使っていたバイクをアパート二階に続く外階段の下に停め、真っ暗な中、一階中通路を自分の部屋に向かって歩き始めた。
距離にして10メートルくらいだったが、蛍光灯もない中通路だったので、梅雨雲のせいもあってやけに暗く感じていた。
もう少し歩けば自分の部屋の入口に到着する頃、何故か足音が後ろから聞こえてきた。
ピタピタピタ。
雨が降っているから、濡れたような足音。
大家さんでも来たかな?と思っても振り返ると、そこには誰も居なかった。
あれ?まぁいいか。
南京錠を開けて部屋に入り、床にぺたりと座った。
何故か蛍光灯も点けずテレビも点けず、薄暗いまま床に座ってしまった。
その時はなぜそうしたかは分からない。今もわからない。
そして、しばらく雨の音を聞いていると、またあの時の足音が聞こえてきた。
ピタピタピタピタピタピタ。
違和感を覚えた。
足音が全然進んでこない。
歩数を考えると、もう自分の部屋の前を通り越しても良いくらいなのに。
ピタピタピタピタピタピタ。
何だろう?
さっき閉めたばかりの横スライドの扉を開けて中通路を見ると、自分の部屋の前迄続いた足跡はあったが誰もいなかった。
俺はバイクを乗ってきてるからクツは濡れてないんだよな。じゃあだれが来て消えたんだ?
俺の部屋の前で消えるな。
続くかも。
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