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第五話(笑い声)
高校時代のある日、友人宅で遊び呆け、帰宅が夜中になってしまった事があった。
などと書くと、たまたま遅くなったように思えるが、コレはいつもの悪癖であった。
別に悪さをしている訳ではないので親も何を言ってくるでもなし。
公共機関もない田舎だったので、スクーターで走り回ってるんだから気をつけろや。程度なものだった。
そんな物だから家に着いた夜中の2時ごろは真っ暗。とりあえず玄関だけはいつも通り施錠されていない状態だった。
玄関を開けて、音を立てないようにソーッと家に入り、自室の2階に向けて階段を登る。
ミシミシ鳴るのはご愛嬌って所だが、親がその階段を上り切った部屋で寝てるので、電気は点けないでいた。
そして階段を上り切った先に大きい鏡が壁に掛かっており、そこを左手に向かった突き当たりが自室である。
ソロリソロリと足音を立てないように歩いて部屋の扉前まで来たとき、階段を上り切った所にある鏡の辺りに人の気配を感じた。
ん?
振り返ると確かに黒い人影がそこに立っていた。
『あー、でたな』
怖いとか恐ろしいとかの感情もなく、ただ『出たな』だけ。
まぁそんなモンだろう的に影を無視して部屋に入った。
部屋に入ってから特に何かをする訳では無かったので、寝巻きに着替えてからベッドに入ると、黒い影が部屋の中にいて、入り口の角からこっちを見ていた。
眠いからシカト。
今考えると当時はよほど肝が座っていたと感心する。
そしてベッドの中、物の数分で寝落ちしたようだった。
どの位時間が経ったのか。
ふとまだ暗い中目が覚めた。
『あれ、体が動かない』
金縛りだった。
あの黒い影がやってるのかな?と考えていたら、寝ているベッドの左側の壁から、薄いゴムシートを押してくるように顔が出できた。
ニュニューっと言った感じだ。
流石にビックリしたが、声も出せずに見ていると、だんだん顔の形だけだったのが人の頭部の形になり、ポン!と言った感じに首だけ飛び出てきてフワフワ浮いていた。
『頭だけ出てきた!』
なんだこれ?そう思いながらも目を離せずに見ていると、フワフワと左右に揺れながらその頭は俺の左耳元まで近づいて来た。
「うひゃひゃひゃ!!!」
そんな感じの笑い声だった。
その声にビックリして固まっていると左右にフワフワ揺れながら、寝ている俺の体の周りを2周ほど回っただろうか、今度は右耳下まで来てからスーッと消えてしまった。
なんなんだ、ビックリするからいきなり耳元で笑うなよー。
続くかも。
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