6話「お屋敷。」

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6話「お屋敷。」

お屋敷の中へ入り広い玄関に立った。 「堅苦しいのは要らん、あいつ あいつは何処だ。」 私は目を丸くした。 関係性はどうあれ失礼すぎやしないかと吃驚しすぎて心臓が止まりそうになった。 「貴方様は…。  主人はこちらです。  そちらを履いてくださいね、案内します。」 お爺さんは来客用に備えてあったスリッパを示し私が履いたのを確認すると案内に歩き始めた。 因みに木村さんは履いていない。 お爺さんは木村さんの足元を見た時履かないのがこの人は当たり前だと言わんばかりに口角が少し下がった後私の方を確認した。 小声「ちょ、ちょっと木村さん!     ここの人とどういう関係なんですか‼    それとスリッパ履きましょうよ‼‼」 「ん? ここの奴とは古い付き合いなんだ、腐れ縁ってやつかもな。  俺ぁスリッパが嫌いなんだよ、上手く言えんが嫌いだ。」 私は少し呆れながらも主人さんまでの廊下を歩きながら見ていた。 廊下に大きい窓がありそこから陽光が入っている。 綺麗な花瓶やケースに入った価値は分からないけど凄そうな壺が(いく)つかあった。 ここの人は花が好きのよう。 この季節に咲く花が花瓶に綺麗に生けられておりとてもとても美しかった。 お爺さんが止まった、着いたらしい。 ここまでの道中、木村さんはあまり喋らなかった。 お爺さんは木で出来ている少し重そうな二枚あるドアを開けてくれた。 ギィーーギギィ、、、 ドアの音はこの家の歴史の様なものを感じる。 不快には感じなかった。 「ここが主人の居る部屋です、どうぞお入りください。」 木村さんを前に入り部屋の角の先に、車椅子に座ったお婆さんが居た。 「いらっしゃい、本日はお越し頂きありがとうございます。  そこの可愛らしいお嬢さん、貴方の事は聞いていますよ。  私は富枝(とみえだ) リシェロ 撫子(なでしこ)よ。  好きに呼んでね。  来てくれてありがとう。  大変だけれど、終わったら美味しいお菓子をご馳走するわ。」 「あっ、いえ、はい!」 とても雰囲気のある方だ。 木村さん同様40後半から50代くらいかな。 表情も雰囲気も柔らかい。 気高く美しく、かと言って話しかけにくい感じではない人。 白の綺麗なワンピースにベージュのブランケットを羽織(はお)っている。 本当に綺麗だな。 「うふふ、いい返事ね。」 「コノヤロー、、、  おめぇはいつもいつも俺を呼びやがって‼  この屋敷広いんだよ!ちったぁ狭くしたらどうだ‼」 いきなり木村さんが吠えた。 吃驚。 少し意地悪い微笑みで富枝さんが楽しそうにこう言った。 「良いじゃない、報酬は弾むでしょう?  そっちに損はなくて?」 「損は無いが大変なんだよ‼  お陰で腰ちょっと痛いんだぞ!」 そう言っている木村さんは怯んでいる大型犬の様だ。 「あらそれは大変、お医者様でも呼びましょうか?」 優美に微笑みながらわざとらしく心配しながらこう言う富枝さんは食えないなと思った。 「結構だよ‼‼」 自分の負けだと言わんばかりに木村さんが折れた。 なんか、仲良し?らしい。 部屋の隅で待っているお爺さんもまた始まったかと(あき)れた様子。 「あの、お二人のご関係は…?」 「この人とは昔馴染(むかしなじ)みなのよ。  中学生の時から一緒なのよ。」 「ったくよ、まぁ良いけどよ。  それより(あし)と身体、異常無ぇか。  車椅子も調整要らねぇか。」 ここで分かった。 木村さんが道中無口だったのは純粋に富枝さんを心配していたのだ。 「えぇ、問題無いわ。  いつもありがとう。」 「気にするな。」 私はこのやり取りから悲しさや心配等の気配を少し感じた。 この二人に何があったかは知らないけれど、これからもお二人がこの口喧嘩のようなものを続けられたらと切実に思った。 誤字脱字があればご指摘お願いします。 ここまで読んでくださりありがとうございます。 次回、口喧嘩からです。   
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