8話

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8話

私は寝てしまったらしい。 目が覚めた時、ご主人様のきれいな顔が目の前にあり、びっくりした。 そっと、ご主人さまを起こさないようにベットから降りる。 「のどかわいた・・・」 ぽそっとつぶやき、キッチンに向かう。 キッチンには・・・悟さん、がいた。 「・・・ぁ・・・」 「え、と・・・」 「・・・」 何か言おうと口を動かすけど、結局黙ってしまう。 「・・・ちょっと来て」 「え、あ、はい」 急に声をかけられたから体が跳ねてしまった。 「こっち・・・」 悟さんに誘導されるようにして倉庫のような所に連れて行かれる。 「・・・な、んですか?」 「見てほしいものがあるの」 淡々と言葉を発した悟さん。私を先に中に入れたあと、悟さんも入り、鍵を締めた。 「え・・・?あ、あの・・・?」 「・・・」 黙ったまま壁に手を押しつけられる。動きを封じられた。 「ちょ・・・!」 静止の声をあげようとする間もなく、口に柔らかいものが当たった。 「ふ、・・・や・・・」 悟さんの唇が、私の唇にふれて、いる。 きす、してる。 「っ・・・!や、だ・・・!」 あそこでの日々が頭をよぎる。毎夜毎夜、男たちの相手をさせられ、卑猥なことばかりさせられた。体の中から嫌悪感が這い上がってくる。無意識のうちに涙が出た。 「なん、でだよ・・・!」 私も大概だと思うけど、悟さんはものすごく苦しそうな顔をしていた。 「・・・っ!さと、しさん・・・?」 私を押さえつけていた手が離れる。私はためらいながらも頬に手を伸ばした。 悟さんの頬に伝っていた涙を拭う。 ものすごく、辛くて、悲しそうで・・・私も、悲しかった。 「っ、やめろ、さわるな!」 手を振り払われ、倉庫から悟さんは出てってしまった。
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