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悟Saido
キッチンで水を飲んでいると、あいつが来た。
「・・・ぁ・・・」
思わず声をもらす。
「え、と・・・」
うつむき気味に目をきょときょとさせるあいつ。僅かな沈黙の後、俺は言った。
「・・・ちょっと来て」
「え、あ・・・はい」
あいつの方が年上のはずなのに敬語を使っているのが変な感じだ。
「こっち・・・」
倉庫の方に連れていく。
「・・・な、んですか?」
眉根を寄せて、こちらをじっと見ている。
「見てほしいものがある」
そのまま倉庫にあいつをいれ、自分が入ってから鍵を閉める。
「え・・・?悟さん・・・?」
大きな目で困惑気味に見つめてくるあいつ。
「・・・」
試してみたかった。蓮兄さんはそんなことで女と関わらないけど、こいつがどう思っているかはわからないから。兄さんたちがこんなやつと関わるくらいなら、俺が試す。
・・・あい、の手を上で拘束する。
「ちょ・・・!」
静止する声も聞かず、柔らかそうな唇に、キスをした。
「ふ、・・・や・・・」
必死に抵抗しようとしているけど、痛くも痒くもない。
「っ・・・!や、だ・・・!」
体がびくっ、と震える
あいは、一度大きく叫んで泣き出してしまった。
「なん、でだよ・・・!」
「・・・っ!さ、としさん・・・?」
お前が、人を見る純粋な目も、お前の、声も、存在も、全部全部、だいきらいだ。
頬に手が触れ、涙が拭われる。自分があいの拘束をといていたことに気づき、愕然とした。
「っ、やめろ、さわるな!」
――純粋なその目で、その心で、俺に関わるな。
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