5話

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「ねね、名前はなんていうのー?」 ご主人様ではない方の男性に聞かれる。 「No.199739です」 私は10年間そう呼ばれてきた。 「そうじゃなくて、名前」 「な、まえ・・・?」 「ないのか?」 ご主人さまに問われる。あったのかもしれないけど、忘れてしまった。 「そうか・・・じゃあ、今日からお前の名前は『あい』だ」 「あい・・・ですか?」 「ん」 くしゃくしゃと頭を撫でられて思わず目をつむる。 「俺は天宮蓮」 「僕、桜森悠ー」 「蓮様・・・ご主人様と、悠様」 2人ともいい名前だ。 「様はつけなくていいよ?」 「え、ですが・・・」 「悠さんでいいから!」 「・・・はい。わかりました」 押し切られた形で、さん呼びにさせられた。 「俺も蓮さんな」 「駄目です。ご主人様です・・・」 これは、決まりだから。 「・・・そう。まぁ、慣れたらでいいから」 「そういえばさー、199739って、蓮兄さんの誕生日じゃないですか」 「ん、そうだな」 199739・・・1997年3月9日? 「だから、私を買ったんですか?」 「それだけじゃないけど。いつか教えてやる」 「分かりました・・・?」
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