魔物の資質

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 さてさて、そんな不穏な空気が続いている里において、当のマナはと言えば……。 「くふふっ、またカムイの負けかしら?」 何ら平素と変わらない様子で、笑みを口に含んでいた。 カムイの手札に向けて、暫し指先を彷徨わせながら、これだと思うカードを引き抜いた。 「へっ、ドンマイ」 カムイは得意げに嗤う。 マナの引き抜いたカードはジョーカーだった。 「あら、残念」 次いでミリーは、マナの手札からあっさりとジョーカーではないカードを抜き去った。 しかしながら、嬉々としていた表情はあっさりと覆る。 「何よ、揃わないじゃない」 期待を裏切られて、ミリーは口を尖らせた。 「おっ、なら一抜けは俺かな」 予想通りにセスは見事にカードを引き当てて投了した。 そうなると、苦虫を噛み潰したように顔を顰めたのはカムイだ。 なんせ、マナの手にあるのはジョーカーの一枚だけ。 カムイはそのカードを取らざるを得ない。 無言で睨み付けたところで後の祭り。 「だぁぁあ、こんなんアリかよ?」 「ドンマイ、カムイ」 マナはそっくりそのままお返しした。 「へっ、言ってろ」 苛立ちながら、カムイはミリーに手札を差し向けた。 カムイとミリーの一騎打ち、果たしてその勝敗は? ミリーの指先がカムイの手札を前に、左右に揺れる。 「右……?やっ、やっぱり――……?」 「早くしろよっ!!!」 右を取らせたいあまりに、急かしたカムイの負けだった。 ミリーはカムイの心理を読んで左を選択。 「くそぉぉおぉ」 「「「ドンマイ」」」 ウルバン家は平時と何ら変わらず、賑やかしい笑みが木霊していた。
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