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「せっかくしばらくぶりにお会い出来たのに申し訳ないんですが、ひとりで行動して少々疲れてしまいまして……コウ君の中でひと休みさせていただけないでしょうか」
「ああ。どうぞ」
「ありがとうございます!」
そう断るや、イリサはコウの背中に伸びていた影の上に立つ。その中に吸い込まれて姿を消した。
あの時、シアーズが見たのは、イリサの足元に「影が存在しない」という事実だった。
コウの影の中に入ったとたん、イリサが青く染めた草原も街の風景も、全てが元の色に戻ってしまった。
私の魔力はこうやって、コウ君のところへ帰るだけで、跡形もなく消えてしまいます。でも、シアーズさんが描き続けた青い色の絵画はこれからもずっと、この世界に残り続けます。
生命と海を司る神たる私よりも、僅かな時間を精いっぱい生きた彼の方が、ずっとずっと凄くて尊いと……私はそう思うのです。
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