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庭の草むしりをしていたら、勇者の日記と書かれたノートが入ったブリキの缶が発掘された。
「ジョークグッズだろ」と思ったが、どう考えても人間が書く文字ではない。
妹の字でもなかった。
ウニョウニョしたイラストも添えられている。
別世界の人間が書いたと思わせた、ラノベか?
オヤジがふざけて言う。
「『トンデモ鑑定課』に出してみろや。貴重なもんだってわかったら、焼き肉に連れて行ってやる」
草まで生やしやがった。
いくら草むしりから出てきたからって、そりゃあねえぜ。
頭にきたオレは、番組に応募した。
すぐ連絡があって、出張鑑定をするコーナーに出演することに。
場所は、近所の公民館である。
だが、オレのシーンは全部カットされた。
鑑定結果も、「測定不能」と出る。
おかげでオレは後日、クラスでウソつき呼ばわり。
せっかく、「テレビに出るぞ」ってクラス中に言いふらしたってのに。
「何がダメだったんですか?」と聞くと、「全部ヤバイ」と言われた。
まず、このノートが入った箱だ。
ブリキだと思っていたのだが、地球で採掘できるどの金属とも違っていた。
そういえば、サビていなかったっけ。
紙も、地球の材質で作られていないとか。
文字も、すべて地球上の法則に基づいて書かれていない。
ラテン語に似ているから、解読は可能ではとのこと。
国際的な組織で、調査してもらうことになった。
それによると、旅の記録であることは確かだという。
「家のツボを勝手に割ったら怒られた。薬草を探していただけなのに」
「仲間が機転を利かせて脇道にそれなければ、ラスダンをループするところだった」
と、書いてあったとある。
真偽は定かではない。
だが、イラストが抽象的すぎて、とある学者は
「めっちゃ強い魔物を、三日かけてぶっ殺した」
と記載してあると主張する。
それに対し、
「魔物をヨメにして、三日三晩イチャイチャしている」
派も現れた。
ネット内でも、「ガン◯ムの最強パイロットを決める」レベルを超える醜さの戦争になっている。
このままネット内が焦土と化すかと思われたその時、勇者本人が日本に現れた。
ガチでRPGで見かけるような出で立ちで、我々日本人を驚かせる。
勇者の傍らには、仲間の魔物が寄り添っていた。
「イチャコラ」派の勝ちである。
勇者は敵の精神攻撃に遭って、この地に迷い込んでしまったらしい。
元の世界の座標はわかるので、魔法を唱えたら速攻で帰れるという。
「いやあ、まさかオヤジが勇者の子孫だったとは」
オヤジの先祖は勇者と魔物との間に生まれた人間で、危険だからって赤ん坊だったオヤジを安全な世界に飛ばしたそうだ。それがこの地球だったという。
「なんでオヤジのほうが年上に見えるんだ」って聞いたら、「地球」と「勇者の世界」では、時間の流れが違うらしい。
ビール腹になったアラフォーの子孫を見て、まだ一〇代に見える勇者夫婦は幻滅気味だった。
馴れ初めなどの旅の記録を、厳重にあの箱へ保管していたという。
ところが、それも敵によって転送されてしまったとか。
勇者は、子孫であるオレに手を差し伸べた。
地球人類にもわかるような言語で、勇者は言う。
『セーブできないから返して』
焼き肉で手を打った。
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