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 不良はやたら声がでかい。三好豪は試験勉強に励みたいのに、背後にたむろする不良グループのせいでちっとも頭に入らない。 「はーっ! マジであの子と遊びたいわーっ! なぁリクっ! 西高の彼女に聞けって!」 「なんて聞くんだよ。『西高の制服着たクッソ可愛い子と遊びたいんだけど、誰か知らない?』って? はん、嫌に決まってんだろ。直美に殴られるわ」 「そんなに可愛かったのかよ。ジュリアさんより?」 「あれはマジでやばい。なぁカオル?」 「しらねぇよ」 「カオルは昨日いなかったろ」 「あ、そうだった。お前がいればナンパもチョロかったのにって話したんだ」  三好はシャーペンを走らせる。デカメロン・ボッカチオ、西部戦線異状なし・レマルク、蟹工船・小林多喜二……思想芸術分野は出題されたとしても1、2問だが、三好はこの分野が好きだった。空樽は音が高い……この分野を勉強して知った言葉だ。不良はまさしく空樽だ。脳みそがスカスカの奴ほど声がでかい。  県警を志望する三好は3ヶ月先に一次試験を控えている。しかし三好の属する機械科の学生はほとんどが学校求人で内定を決め、6月現在、内定が決まっていないのは進学組と一般求人組のたったの5人だ。その中には不良グループの桜井カオルもいる。散々悪さばかりしておいて、生意気にも警察志望だ。  その日三好は問題集を一冊解き終わったご褒美として、ポルノサイトを徘徊していた。 このところ試験勉強のストレスで自慰行為の頻度がグンと上がっていた。しかし性対象が男である三好は自己処理で済ませるしか方法がない。検索窓に「ゲイ」と打ち込み、おかずを探す。  外人ばかりだ。三好は断然日本人派である。それも、美形の男でなければ抜けない。仕方がないのでお気に入り登録してある中から新作を探す。名古屋のゲイ専門店の「メロ」に期待したが、新作のリリースはないようだ。やっぱり新規開拓するしかない。もう一度検索窓にカーソルを合わせ、キーボードの横で指先をトントンと叩く。何か良いキーワードはないだろうか……  ああ、そうだ。ひらめき、「女装」と打ち込む。だめだ。女すぎる。三好はあくまで男が好きだ。妖艶な色気まで出されると萎える。 「あっ!」  今度こそひらめいた。「女装」を取り消し、そこに「男の娘」と打ち込む。出てきたコンテンツの数々に、三好は「いいぞ、いいぞ」と興奮した。  そこに「凌辱」の単語を見つけ、食いついた。三好の性癖である。タイトルは「万引き男の娘を店主が凌辱!」これは見るしかない。三好は迷わずクリックした。  映っているのは、西高の制服を着た黒髪ロングの女だ。スカートから出た足は白くて細い。これが男? 三好はタイトルを確認した。 「警察に黙っててやるからヤらせろ」  店主には見覚えがある。学生通りにある本屋の店主だ。まさかこんなに堂々とエロ動画を配信しているなんて……まぁ、無料ならまだしも、有料サイトで素人の動画を買う人間なんてよっぽどのマニアだ。この街には自分くらいしかいないだろう。 「調子乗んなよ、クソ犯罪者」 なんだ? 三好は目を見張った。黒髪ロングの髪がバサッと剥がれ、中から脱色した金髪が出現した。こいつ、カオルだ。心臓がドドドッと波打った。 「あんた、自分の立場を分かってんのか? これは犯罪だぞ。俺は警察に駆け込んだって良いんだ」 「な、なんだお前っ! 万引きしておいてっ」 「見ろよ。俺はなにも盗んでない」  カオルは学生鞄を乱暴に机に置くと、中を確認するように顎でしゃくった。店主は「わかった、わかった、今日のところは見逃してやる」 「見逃す? それはこっちのセリフだぜ。もっとも、俺はあんたを許さない。あんたは俺の妹を」  その時、ドアが開いて店主の妻が現れた。カオルに向かって飛びかかる。カオルは一瞬目を剥き、しかし持ち前の反射神経で難なく避けた。三好はのめり込んだ。アダルトコンテンツとしてではなく、ドラマとして展開に興奮した。  店主は呆気に取られていたが、やがて事態を把握し、妻と共にカオルに飛びかかった。カオルは「クズ夫婦がっ」と叫び、カバンを持ってドアへ向かうが、あと少しのところで妻に強打され、その場に倒れた。  画面が一旦暗くなり、続いて椅子に縛り付けられたカオルが映った。三好は勃起した。後ろ手に固定され、両足を椅子の脚に括り付けられたカオルは、いつものような冷酷な目で画面を睨みつけている。セーラー服姿とその表情があまりにもアンバランスで、それが余計に興奮した。 「ふざけんな……あんたら、タダじゃすまねぇぞ」  凄むが、その声はやや震えていた。次にウウウ、という機械音。カオルは頬を引き攣らせ、両手の結束を解こうともがく。 「やめろっ! くそっ!」  顔を背けたカオルの端正な顔に、凶悪な極太バイブが当てられる。三好はズボンを下げ、パンツからペニスを取り出した。上下にシゴく。  バイブは顔から胸、腹と移動して、スカートの中に侵入した。足は開かれているものの、スカートのせいで中は見えない。焦れていると、バイブを持つ手とは違う手が、スカートをペラっとめくった。カルバンクラインのボクサーパンツが現れる。  カオルは目を固く閉じ、歯を食いしばっている。バイブはパンツ越しにカオルの窄まりをこじ開けるように侵攻し、三好は「入れちゃえっ」と声にした。 「ふざけんな……やめろ……」  カオルの声は虫の音だ。不良のトップも大したことないな、と三好は気分を良くした。カオルを慕う連中がこれを見たら……考えただけで射精しそうだ。今日は何度でも抜けそうなのでここで軽く抜いておこう。ペニスを握る手をシェイクするように上下し、カオルの苦悶の表情を見ながら発射した。死ぬほど気持ちよかった。 「やめろっ! やめろっ!」  余韻に浸る間も無く画面に釘付けになる。カルバンクラインが破られ、バイブが直接カオルの肌に触れている。三好はたちまち勃起した。 「くそっ……くそっ……ぜってぇ……う、ゆ、ゆるさっ」  夫婦は知識がないのだろう。女用の極太バイブで、そこを一切慣らさず、濡らすこともなく、一息に貫いた。カオルは目を剥き、口を大きく開け、しかし言葉はなく、口の大きさに合わない吐息を漏らすに留まった。三好は何度も巻き戻し、その吐息を耳に焼き付けた。満足して次へ進む。  バイブを根元まで飲み込んだカオルのそこからは血が滴り、床まで汚している。その時点で普通の人間なら画面を変えるだろうが、三好の性癖は歪んでいた。乱暴なバイブによってカオルが苦悶を浮かべるのを、「へへっ」と笑いながら、青竹のように隆起したペニスを上下にしごく。 カオルのペニスは萎えたままだ。画面が切り替わり、「1時間経過」とテロップが表示される。苦悶を浮かべていた表情は虚になり、うわごとのように「とめろ」と繰り返している。また画面が切り替わり、「3時間経過」と表示された。どうやら夫婦は、他のいじめ方を知らないらしい。 「と、トイレに行きたい……お、おいっ! 誰かっ」  そばに誰もいないのか、キョロキョロと周囲を見回している。バイブはガムテープで固定され、足元にはちょっとした血溜まりができている。 「お、おいっ!」  身をよじるが、どうにもならない。色白の顔から血の気が引いていく。「漏らせっ、漏らせっ!」三好は画面に向かって吠えた。自分の声に興奮して、ペニスに力が這い上がる。 「誰かっ……」  キョロキョロ見回していたカオルが、カメラを向いた。ライブ配信とでも思ったのか、カオルは顔を赤くし、「見るな」と小さく言った。その瞬間三好は射精し、カオルは失禁した。
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