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三好は廊下を駆け走る。
「万引き男の娘を店主が凌辱!」はシリーズ化され、4まで更新されている。更新日は毎週金曜日。カオルの様子を見る限り、更新日である金曜日に撮影している可能性が高い。金曜日、カオルはカバンの中をやたら気にしているからだ。
そして三好は何度も妄想した行為をついに実行した。階段を3段飛ばしで駆け下り、渡り廊下を走り抜け、オタクのサンクチュアリ、パソコン教室へ駆け込む。放課後はコンピューター・コミックアート部という冴えない奴の救済部活動に使われている。今日も部室はメガネ率100パーセントを誇り、湿った笑い声が飛び交っている。
「おいっ! くすねてきたぞっ!」
部室だと三好は声がデカい。カバンから西高のセーラー服を掴み出し、討ち取った首のように掲げる。
「ど、どうしたのですぞ三好巡査っ! そ、それは50年の歴史を持つ西高の制服でありますぞ!」
警察採用試験を控える三好のあだ名は、ここでは「三好巡査」だ。
「クラスメイトに変態がいてね。そいつのカバンからくすねてきた。今頃あいつ、真っ青になってんぜ。くくっ」
「なんとっ! その変態は誰でありますかっ!」
「ぼ、僕じゃないからねっ」
クラスメイトの小デブが喚いた。
「まぁまぁ、論より証拠さ」
三好は空いている席に座り、パソコンを立ち上げた。ポルノサイトにログインすると、「ハ、ハレンチですぞ!」と騒がれたが、気にしない。今日はみんなと共有する日だ。
「言っておくけど、これは偶然見つけたんだからな」
そう断って、「万引き男の娘を店主が凌辱! パート5」のリリースを待った。
「きた!」
1時間も待ったので、ギャラリーは各自パソコンに向かっていた。「おいっ! 早くっ!」呼び寄せ、音量を最大にする。
「カ、カオルくんっ!?」
小デブが叫んだ。
画面に現れたのは学生服のカオルで、その顔は真っ青だった。早速店主に「女装はどうした」と詰められ、「わ、忘れた」苦しい言い訳をしている。
「三好巡査っ! これはどういうことですぞっ!」
「見ての通りさ。こいつ、馬鹿だから万引きして、弱み握られてエロいことさせられてんの。これで5回目。1回目なんて、カメラの前でお漏らししたんだぜ」
「そ、それって僕も見れるの?」
「あとで見せてやるよ。でもまずはこれを見ようぜ」
画面の中で、カオルはカメラに向けて股を開き、渡されたバイブを自身の窄まりに当てがった。従順なのは、動画をネタに強請られているためだろう。
「えっ、いきなりっ?」
カオルは片方の手で窄まりを開き、わずかな穴にいきなりバイブを突っ込んだ。パート1から4まで、指を使って慣らしたことは一度もない。今回も出血し、「うわぁ」とオタクたちが目を逸らす。もちろん三好は完勃ちで見入る。
「まだ半分」と店主。カオルは「わ、分かってる」と律儀に答えた。どうですかみなさん、桜井カオルのこの情けない姿! 三好はみんなの反応を伺ったが、どいつもこいつも「見ていられない」という風に目を背けている。くそ、これだから童貞は。三好は非童貞気分で苛立った。
カオルの息が浅くなる。手が止まる。カオルの目が怯えたようにカッ開き、「じぶんで、や」と言いかけたところで店主の手がバイブを握った。残りを一息に押し込む。カオルの両足が、ふわりと浮いた。
「しょ、小生、リョナ物は苦手でありますっ」
何名かが席に戻った。
「何がリョナだ。どこも切断されてないだろ。ほら、まだまだこれからだぜ。この状態で3時間放置されるんだ。ここは編集でカットされるから、ライブ配信でちゃんと観ておいた方が良いぜ」
助言したが、「3時間放置」と聞いてまた何名か席に戻った。残ったのはクラスメイトの小デブ一人だ。
「カオルくん……」
恍惚な表情で呟き、股間をさする小デブの姿に三好は気分を害した。桜井カオルをズリネタにするなんて百万年早いんだよ、デブ! 心の中で毒吐き、三好は画面を切った。
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