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千葉くんはわたしがトモくんのものだから、わたしを欲しがっているだけ。
確かにわたしはトモくんの彼女で、トモくんのものだ。
……でも。
秋の終わりに二人で部屋にいたあの日にぼんやりと空中を見つめる彼を目にしてから、よくわからなくなっている。
わたしは誰のものなのだろうか。
心がだんだんとトモくんから離れて、空中をさ迷い出している。そのうち、千葉くんのほうへ近寄っていってしまいそうで、怖い。
もしかしたらもう、そうなっているのかもしれない。
心が完全に千葉くんへの想いに染まってしまったら、彼はわたしのことなんて欲しくなくなるのだろうか。
「ほのか?」
足が止まりそうになっていたわたしに気づいて、トモくんがわたしを呼ぶ。
手を差し出された。だからわたしは彼と手を繋ぐ。
トモくんのもので居続けるために。わざときつく、その手を握った。
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