わたしはだれのもの

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 変な沈黙が部屋を支配する。  同時に「お待たせー」と玄関のほうからトモくんの声がした。 「おかえりー」 「待ってましたー」  二人同時に返事をして彼を出迎えると、おかしな沈黙はパッと霧散した。  そのときの、空中をじっと見つめる彼の顔を、今でもはっきりと覚えている。  結局わたしと千葉くんは秋が完全に終わって冬になった時期に、初めて寝た。トモくんはバイトでいない日だった。  別に、無理やりされたってわけじゃない。わたしが拒絶すれば千葉くんは引き下がってくれたと思う。なのになぜか、押し倒されてもわたしは何も言えなくて、全部許してしまった。  トモくんの彼女であるわたしの身体を奪えて満足だろうか。  繋がった後のまどろみの中でそんなことを考えていると、隣に寝そべる本人は屈託なく笑った。 「他人のモノって、無性に欲しくなるよね」  何かを無理して吹っ切ってしまったような物言いに、わたしはぽかりと穴が空いたような寂しさを覚えた。
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