わたしはだれのもの

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*  違うよね。他人のものじゃなくて、トモくんのものが欲しいんだよね。  本人に言ったことはないけれど、本当はそうなんだと思う。  トモくんが食べるもの。トモくんが着る服。トモくんが読むマンガ。トモくんの恋人。  千葉くんは誰よりもトモくんのことが好きだ。きっとわたしよりも。 「昼さあ、学食じゃなくて駅前のラーメン食いに行かない?」  ゼミ終わりの教室を一緒に出ながら廊下を歩いていると、トモくんが唐突に提案してくる。 「いいねえ、行こ行こ」  大学のすぐそばにある、学生に人気のラーメン屋が頭に浮かんだ。わたしもトモくんも、それから千葉くんも好きな店。暇があればよく三人で行く。 「あ、千葉ー。今からラーメン行かん?」  トモくんの声につられて彼の視線の先を見ると、ちょうど千葉くんがこちらに歩いてくるところだった。  今朝わたしが直したはずの寝ぐせは、なぜかまた復活していた。
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