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「リラは、なにが好き?」
「なにって何よ?」
「種。なにから植えたい?やっぱりシチュエーション的に林檎?」
「うわ、超嫌味。それってアダムとイブになぞらえて私たちが楽園追放されたって意味?」
にやりとリラが笑う。初めて見たリラの笑顔だ。僕はうれしくなる。だって僕らは一連托生なのだ。どうせならリラを好きになりたいし、リラにも僕を好きになってほしい。
「逆さ。楽園はここだよ。だって世界はいちど終わっちゃったのに、まだメシアは来てくれない。こうなったら知恵の実でも食べて、僕らで新しい世界を作るしかないだろう」
「なるほどね。だったらメシアをやきもきさせるためにイチジクも植えない?」
「よしきた。あとは桃なんかどうだろう。あれも神の国の神秘の食べ物だ」
「いいわ。あとは麦や稲かしら。私たちの楽園だもの、絶対うまくいく。なんだって作ってやりましょう」
明るい星の光を浴びて、僕らはジョークを飛ばしあう。惜しみなく注ぐ光。それは足元の灰さえ白銀に変えていく。
僕らは空を見つめる。空を通してお互いを見つめる。ほら、やっぱり大丈夫。ここは希望だらけの楽園。明るい夜に目を閉じて、僕らはそっと手を握りあう。
母なるジョウド。僕たちが創る新しい世界。その御手に抱かれて僕らは大地を踏みしめた。
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