新世界

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 足を降ろすと、白い地面につま先が埋まった。途端に粒子状のなにかが舞い上がり、慌てて僕は顔を背ける。 「灰だよ」  となりで、あきれたようにリラが言う。「そんなに警戒しなくても、少し吸うくらいなら平気だってさんざん言われたじゃない」とも。 「ジョウドの地面に灰が降り積もってるなんて、幼稚園の子だって知ってることだわ。気をつけてよ、船とは違うんだから」 「そりゃそうだけど、灰がこんなに細かくて柔らかいものだとは思ってなかったんだよ。こんなの、気をつけようがなくない?」 「じゃあいっそ気にしないことね」  取り繕う僕を置いて、リラはさっさと先に行ってしまう。あとを追うけど、リラの後ろはまるでわざと蹴り上げたみたいに灰がもわもわして、すごく歩きづらい。  初対面のときからリラはずっとこんな調子だ。そっけないというか冷たいというか。ずっと何かに怒っている、みたいな。  まさかこのまま僕の目をくらましてどこかへいってしまうつもりだろうか。  通信機もレーダーも持っているのはリラだというのに。まずい、と思ったけど、すぐにそんなわけはないと思い直す。当面の食料を持っているのは僕だし、肝心の種だって僕が持っている。もしリラが僕を嫌いだとしても、命がけで離れるほどバカじゃないだろう。  僕らは一連托生、このなにもないジョウドに於いて僕たちはほかに寄る辺がない、二人きりのパートナーなのだから。
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