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「まさか、話す事で相手を操るチカラがあるなんて思いもしなかったから」
「あの王子の魅了の力の事は、魔術を使う者達には有名だったんだよ」
だけどまさか、この世界全体を守るはずの『聖女』までも操ろうとするなんて思いもしていなかった。力を使う兆候を見て、クロードは自分が一体何に加担したのかを知った。
聖女の私物化。この国に縛りつけ、国交のカードにするつもりだ、と。
カナはクロードの言葉に従い、それからつい先ほどまで、話せないフリをし続けた。
聖女としての力がないフリも。
そうして、カナが聖女では無いと王子が疑い始めた頃、クロード扮する『本物の聖女』が現れることで、カナを追放するように誘導したのだ。
「うまく行って良かったわ」
「カナはこれからどうしたい?」
クロードの問いにカナは窓から外を見た。真っ暗な森しか見えないけれど、カナにとっては望んだ外の景色。
「聖女って、本当は何をするものなの?」
「王子は知らなかったんだろうけど、本来、聖女は穢れの溜まった場所に居るだけでいいと言われてる。その存在自体が浄化の力をもってるって」
「じゃあ、この世界を旅しながら、浄化っていうのをしてみようかな」
無理矢理連れてこられたとはいえ、役目があるというならやってみようとカナは思う。
「それなら、僕にも召喚した責任を取らせて欲しい」
「責任?」
首を傾げるカナの前に跪き、クロードは彼女を見上げて告げる。
「ずっと側で君を支えさせてくれませんか?」
頬を染めるカナの手にキスを落とし、魔術士クロードはそうして優雅に微笑んだ。
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