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それから数日して、警察から電話があった。 私の部屋に潜んでいたのが、ホームレスの男の人だったことが伝えられた。 「あの、その人はいつから部屋にいたと言ってるんですか?」 私は思わず聞いていた。 少し間があいて、 「1週間前だそうです。朝、鍵が開いていたから侵入したと」 と言われた。 「…え」 1週間…?それはおかしい。 あの腕時計の持ち主がホームレスなら、もっと前から部屋にいたはずだ。 そうじゃないと言うのなら、あの謎の音は何だったんだろう。 でも、確かに先週、ゴミを出すときに、回収車が来ていて慌てて部屋を出た覚えはある。 間に合わなくなるし、ゴミステーションは目の前だからと、鍵をしなかった。 「何かありましたか?」 「あ、いえ…何でもないです。教えてくださりありがとうございます」 「家から少し離れる場合でも、戸締りはしっかりするようにしてくださいね」 電話を切った後、私は暫く茫然としてしまった。 自分のベッドの下に見知らぬ人が住み着いていただけでも不気味だった。 それが1週間も続いたということも、気味が悪い。 でも、何より気味が悪いのは、あの謎の音の正体がまたわからなくなったこと。 元々そこまで問題視していなかったけど、人がベッドの下にいたことと、ベッドで寝ているときにあの音がハッキリ聞こえたことで、関連付けてしまったせいで気味の悪いものになっていた。 あの音の正体が、見知らぬ人の腕時計だったなら、その不気味さは払拭できた。 でもそれがわからなくなったせいで、余計にアパートに戻りづらくなった。 電話終了後のスマホの画面をぼんやりと眺めていると、後ろから明里に声を掛けられた。 「警察の人、何て?」 私は、部屋で発見された男の人がホームレスだったこと、侵入して1週間経過していたということを伝えた。 「ホームレスが1週間も…。よく無事だったよね、知らなかったとはいえ」 確かに、危害が加えられることもなく発見に至ったのは、今になって振り返ると凄いことだ。 「物盗りとかが目当てじゃなくて、単に暖を取りたかったのかもね」 秋が深まってきて肌寒い時期だ。それもあり得るかもしれない。 そういえば―― 「一回部屋に戻って、服取って来ようと思うの」 明里の部屋に避難してきた時は、最低限の荷物しか持ってこなかった。 貴重品や数着の服しか持ってこなかったから、手持ちの服ではそろそろ寒い。
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