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女子高生同士で集まると大体話題は恋バナだ。
そして彼氏持ちの友達はみんな自分の体験をセキララに語ってくれる。
だから友達の話で聞いていた「あれがこれね」と思ったのだ。
聞き及んでいたとおり、まるで口の中で生き物が動いているようだ。
舌で口の中を探られ、舌が絡みつき、気持ち良くて力が抜けてくる。
唾液の水音が室内に響き渡ってなんだかいやらしかった。
再び柊ちゃんの唇が離れた時、私はすっかりとろけきっていた。
「深いキスまでするつもりなかったのに、莉子がそういう顔するから」
「だって……気持ちいいんだもん」
「やっぱその制服姿でそういう顔されると犯罪的だな……」
「……もうっ!さっき犯罪的って言葉はもう言わないって言ったのに!」
「ごめん、ごめん。犯罪的に莉子が可愛いだけ」
そう言ってギュッと抱きしめられた。
私の初めてのキスは、柊ちゃんの部屋で、スズランを抱えながらのものになったのだった。
だからこそ、私にとってスズランはより特別な花になった。
この思い出をいつまでも残しておきたいと思って、一週間ほど自分の部屋に飾った後、私はもらったスズランを押し花にして栞にした。
それからしばらくして夏になった頃、柊ちゃんの家で会った時に私は自慢げにその栞を掲げて見せる。
「柊ちゃん、これ見て!押し花にして栞にしたの!」
「ふぅん、いいんじゃない。実用的で」
「もう〜!実用的とかじゃなくって、せっかく柊ちゃんがプレゼントしてくれたお花だから、ずっと持っていたかったの!私の乙女心!」
「はいはい。分かった、分かった」
「絶対分かってなーい!私の大好きなお花のスズランをプレゼントしてくれて、すっごく嬉しかったんだから!」
「そっか」
柊ちゃんは私の話を聞きながら頭をなでなでしてくれる。
私は甘えるように彼に抱きつき、背の高い彼を満面の笑みで見上げる。
「早く大人になって柊ちゃんと一緒にお酒飲みたいなぁ〜!」
「前も言ってたっけ」
「うん!私の好きな本に恋人同士でお酒飲むシーンが出てくるから憧れてるの!」
それは私が柊ちゃんに初めて会った時、新幹線の中で読んでいた本だ。
BARを舞台にした恋愛小説で、大人の男性と女性がしっとりとした雰囲気でお酒を飲む姿が素敵なのだ。
ビール、カクテル、ワイン、ウイスキーと色んな種類のお酒が登場し、グラスを傾けながら会話を楽しむシーンは憧れの世界だった。
「とりあえず、その制服脱げるようになってからだな」
そう言われて、自分の服装を見下ろす。
今日は土曜日だったけど、塾帰りだった私は制服を着ていたのだった。
「だから大人になってからって言ったでしょ〜!大人になっても柊ちゃんとずっと一緒にいるんだから!柊ちゃんのこと大好きなんだもん!」
「はいはい。分かった、分かった」
「もうっ!またその適当なあいづち!」
拗ねる私を宥めるようにまた頭を撫でると、柊ちゃんは顔を近づけて唇にキスを落とす。
ちょろい私はそれでもう何も言えなくなった。
「……もっとして?」
「分かってる」
瞼を閉じて、彼の優しくて深い口づけに浸る。
その甘さに心が幸せで満たされる。
初キス以来、柊ちゃんとは何度もキスを交わしたけど、何度してもし足りない。
それに私はもう一歩進みたいという気持ちを抱えていた。
友達はもうキス以上のことを経験している子も多くなっているのだ。
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