#6. 交わした約束《過去》

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「バイトか、いいんじゃない。決まったら教えて」 「うん、分かった!」 会話をしながらケーキを食べ終わると、私はいそいそと柊ちゃんの方に近寄り、ピタッとくっついた。 温かい体温を服越しに感じて満たされる。 柊ちゃんに触れるのは久しぶりな気がして、もっともっとくっつきたくなって、私は柊ちゃんの胸に顔をうずめた。 「どうした?」 「久しぶりだから柊ちゃんにくっつきたいの」 そう私が言うと、柊ちゃんは頭をなでながらギュッと抱きしめてくれた。 柊ちゃんに包まれると本当に幸せな気持ちでいっぱいになる。 「キスもして?」 上目遣いで見上げながらおねだりする。 私のお願いを柊ちゃんはいとも簡単に叶えてくれて、すぐに唇が塞がれた。 チュッとついばむような口づけから始まり、それはだんだんと深く深く変化していく。 初めての時はただ受け身だった私も、今では自分から舌を絡めるようになっていた。 柊ちゃんとのキスは他に何も考えられなくなるくらい気持ちいい。 ついつい、もっともっとと求めてしまう。 初めての彼氏だから比較対象なんていないけど、本当に本当に誰よりも柊ちゃんのことが好きでたまらない。 柊ちゃんにもっと近づきたいと思った。 だけど柊ちゃんは私に手を出してくれない。 だから息継ぎで口づけが途切れたタイミングに私は自分から切り出す。 「……柊ちゃん、私、合格のお祝いがもっと欲しいな」 「お祝い?」 「うん。柊ちゃんとエッチしたい。ダメ?」 上目遣いで見つめながら再びおねだりする。 今日は制服じゃないし、もう付き合って8ヶ月以上経つし、きっと大丈夫なはず。 そう信じて疑わなかった私は、次の柊ちゃんの言葉にがっかりする。 「ダメ」 「なんで?私18歳だから大丈夫だよ?」 「莉子を大事にしたいから卒業するまでは絶対キス以上はしない。俺の気持ち分かって」 柊ちゃんも多少は我慢しているのか、顔をしかめて苦しそうにそう言われた。 そんな顔をされたらそれ以上もう何も言えなかった。 私がいいって言ってるのに、柊ちゃんの決意は固いようだったのだ。 「じゃあ卒業したらしてくれる?」 「卒業したらな」 「卒業してもずっと一緒にいてくれる?」 「いるよ。莉子を離さない」 「約束ね!」 私は無理やり柊ちゃんの小指に自分の小指を絡めて指切りをした。 だけど、この約束が果たされることはなかった。 私は卒業とほぼ同時に ある日突然振られてしまったのだからーー。
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