#8. 裏切りと別れ《過去》

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#8. 裏切りと別れ《過去》

「あ、そうそう!バイト決まったよ!柊ちゃんの家の最寄駅近くのコンビニで来週から働くことになった」 年が明け、新しい年を迎えた。 私はこの日、柊ちゃんと年初に初詣デートをしていた。 年末や年始の三が日は家族で過ごして会えなかったけど、1月4日はまだ柊ちゃんの会社が休みだったから昼間から一緒に神社に出掛けたのだ。 境内に向けてお詣りで混み合う中、参拝の列に並びながら私は柊ちゃんに報告する。 「ああ、あの駅前の。それなら仕事帰りにコンビニに寄れば莉子に会えるってこと?」 「うん!基本的に放課後から夜にかけてのシフトに入る予定だから、22時までならいると思うよ」 実はそのコンビニに決めたのはそれが狙いだったりする。 合格をもぎ取った後、年内のうちにバイト先を探して面接を受けた。 できれば柊ちゃんに会いやすい方がいいなと思って、柊ちゃんの家の近くで探したのだ。 駅前のコンビニの求人を発見した時に思ったのは、駅前なら仕事終わりに寄ってもらいやすいし、少しでも会うチャンスがあるかも!ということだった。 柊ちゃんのことが好きで好きでたまらい私は、すっかり生活が柊ちゃん中心になっている。 そんな話をしていると参拝の列が動き、ようやく私たちの番がやってきた。 お賽銭を入れ、鈴を振って鳴らす。 柊ちゃんの真似をしながら、お辞儀を2回、胸の高さで拍手を2回、そして手を合わせて神様にお祈りをする。 柊ちゃんはこういう礼儀やマナーがいつもしっかりしていて、所作がとっても綺麗だ。 横目でこっそり盗み見ながら「私の彼氏はホントに素敵すぎる」とますます気持ちが昂ってドキドキする。 ーーずっと柊ちゃんと一緒にいられますように。柊ちゃんと結婚できますように。 神様に向かって思わずこんな言葉を心の中で唱えていた。 結婚なんて具体的に考えてはいなかったけど、ずっと一緒にいる=結婚というイメージがあったのだ。 お祈りを終えると、最後にもう一度お辞儀をして、後ろに並ぶ人に場所を譲る。 私たちは境内にある露店を見て回り、たこ焼きを買うとベンチに座って半分こしながら頬張った。 「あ、待って!私が食べさせてあげる!はい、柊ちゃん、あ〜んして?」 お箸でたこ焼きをつまみながら、柊ちゃんの口元に差し出した。 柊ちゃんは少し照れながらも口を開けてパクっと食べてくれて、「美味しい」と言いながら私の頭を撫でる。 年初から幸せに満たされ、その後もずーっと柊ちゃんと手を繋ぎ、腕に絡みつき、私はただただ無邪気に彼に甘えてその日を過ごした。
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