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その翌週からいよいよコンビニでのバイトが始まった。
受験前に別のコンビニでバイトをした経験があったからそんなにやることは変わらない。
以前のコンビニとは違う系列店だから、商品の種類や細々としたルールを覚え直す必要があって、それだけが最初はすごく大変だった。
最近のコンビニは外国人店員でも働きやすいようにレジはかなり自動化されていて楽になっている。
一方で、コンビニに求められる機能は増え、振込対応、宅急便対応など店員がする仕事は多岐に渡った。
常にメモ帳を持ち歩き、言われたことや忘れそうなことはメモに書き留める。
それに繰り返し目を通して身につけていった。
柊ちゃんも私がシフトに入っている時は仕事終わりに顔を出してくれた。
帰り道だから寄りやすいらしく、夕食や翌日の朝食を買って帰って行く。
私のシフト終わりと柊ちゃんの仕事終わりの時間が合えば、近くで一緒に夜ごはんを食べたりもした。
「コンビニって色んな人がお客さんで来るから大変だろ?嫌な思いとかしてない?」
ある時、夜ごはんを食べていると柊ちゃんにそう尋ねられた。
確かに変な人やナンパしてくる人もいるにはいる。
だから柊ちゃんは心配してくれているのだろう。
「確かに変な人はたまにいるけど、防犯カメラも付いているし、周囲に他の店員もいて1人になることはないから!」
安心させるように私は笑顔で応じる。
「それならいいけど。莉子は可愛いから変な男に絡まれてないか心配だな」
「大丈夫、大丈夫!心配しないで!」
たまに柊ちゃんは心配症になるのだ。
そんなお客さんの話をしていて、ふと思い出したことがあり、私はそれを話題にあげる。
「あ、そういえば、最近お客さんで柊ちゃんの知り合いだっていう男の人がいたよ」
「俺の知り合い?」
「うん。40代くらいの人で、柊二くんの彼女なんでしょ?って声かけられたの。柊ちゃんのフルネームも知ってたよ。なんか大学はどこ行くのとか色々聞かれた」
「……ちなみにその人はよく来る?」
「私はその一回だけしか話してないけど、チラリと見かけたことはあるかなぁ」
柊ちゃんは少し顔を顰めると、また心配症の顔になって私に釘を刺す。
「確かに俺の知り合いだと思う。だけど、もし何か言われても気にしなくていいから」
「うん、分かった」
こんなふうに柊ちゃんは心配ばかりするけど、基本的に土日しか会っていなかった頃に比べると、バイトを始めてから会う機会が増えて私はものすごく嬉しくて浮かれていた。
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