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そんなバイトを中心とした日々が続き、3月に入って卒業が間近に迫ってきた。
この頃になると友人たちも大学受験から解放され始めてきている。
学校に登校する機会は減ったけど、受験を終えた友人たちと連絡を取り合って、久々にカラオケに行くことになった。
「莉子〜!なんか久しぶり!」
「沙季!合格おめでとうーー!」
「ありがとう〜。あーやっと受験終わった!今日はストレス発散に騒ごうね!」
「うん!」
都内の有名私立女子大に合格した清水沙季は高校入学直後からずっと仲良くしていて、私の一番の友人だ。
沙季の他に数人の友人も集まり、私たちはカラオケで盛り上がる。
他の友人が歌っている最中、隣に座った沙季がコソッと私に話しかけてきた。
「ねぇ、もうすぐ卒業だね〜」
「ね!」
「莉子のロストバージンのカウントダウンだね〜」
「ちょっ、沙季っ!」
沙季は私と柊ちゃんの話を知っている唯一の友達だった。
柊ちゃんとは会ったことはないけど、いつも色々話を聞いてもらっていた。
それこそ柊ちゃんと初めてキスした時に、「キスってこういう感じだよ!」と情報を私に授けてくれたのが沙季なのだ。
沙季は大学生の彼氏がいて、キスどころかもうエッチまで済ませている。
最近は「初めては痛かった」とか「彼氏に愛されてるって感じて嬉しかった」とかエッチに関する情報まで私に耳打ちしてくるのだった。
「だって、柊ちゃんと約束してるんだよね?卒業したらって。それならもうすぐじゃん!」
「そうだけど……!」
意識するとなんだか急に恥ずかしくなってくる。
沙季からも色々聞いて、早く柊ちゃんともっと深い関係になりたいってずっと思っていた。
柊ちゃんのことが大好きだから、もっと柊ちゃんに近づきたいし、知りたい。
だから楽しみか否かと聞かれれば、正直楽しみなのは間違いない。
「ま、莉子の彼氏は大人だし、莉子はただ身を委ねておけば大丈夫だって!あとはうまくやってくれるよ!」
「何か生々しくて恥ずかしい!」
「かぁわいい〜!ねぇ、今度その柊ちゃんに会わせてよね!莉子の話聞く限り、すっごいイケメンだから楽しみなんだけど」
「柊ちゃんは顔だけじゃなくてすべてがカッコいいよ!もうね、どこが好きって聞かれても分かんないけど、ともかく好き!ぜーんぶ好き!」
「あ〜また莉子の柊ちゃん賛美が始まったよ。ゾッコンだよね〜」
沙季は呆れながらも私の話に頷いて聞いてくれる。
卒業を間近に控え、これから先のことに思いを馳せると色んな意味で期待と不安に包まれていた。
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