10722人が本棚に入れています
本棚に追加
……え、なんでここに柊ちゃんが?今日は宣伝部の人が来るんじゃなかったの?
リッカビールの案件だから、もしかしたら催事当日に顔を合わせる可能性はあるかもとは思っていた。
だけど今日はただの下見だし、宣伝部と柊ちゃんは関係なさそうだし、全くの不意打ちだった。
バーラウンジで会って以来、メールも電話もすべて無視している手前、気まづくて思わず目を伏せてしまう。
「お待ちしていました。今日は下見のためにご足労ありがとうございます」
予想外のことに固まる私の隣で、真中さんは朗らかな声で宣伝部の皆さんに話しかける。
真中さんは柊ちゃん以外の2人とは顔見知りのようで親しげな雰囲気だ。
「こちらは施設部の今宮です。準備段階でのやりとりや当日対応などを担当いたします。今日も主に今宮が案内させて頂きます」
「今宮です。よろしくお願い致します」
真中さんに紹介され、宣伝部の方々にペコリと頭を下げる。
柊ちゃん以外の宣伝部の方々に目を向けると、なんていうか仕事のできるオーラを発する美女揃い。
宣伝部の販売促進グループの野宮さんと保科さんという女性の2人だ。
そんな美女と並んでも遜色なく、むしろ霞ませるほどの存在感を柊ちゃんは放っていた。
「ところで、今日は2人でいらっしゃると伺っていましたが、こちらのお方は……?」
「うちの会社の役員で、マーケティング本部長も兼任している立花です。私たちの上司になります」
おそらく真中さんもその存在が気になっていたのだろう。
彼の問いに答えたのは野宮さんだ。
説明によると、宣伝部、商品開発部、マーケティング部を統括するのがマーケティング統括本部であり、その統括本部のトップが柊ちゃんとのことだった。
宣伝部は柊ちゃんに関係ないと勝手に思い込んでいたら、なんと傘下だったのだ。
「はじめまして、立花です。別件の関係で参考になりそうだと思い、急遽宣伝部に同行させてもらいました。私のことは気にせずで大丈夫ですよ」
「本部長にまでご足労いただけるなんて光栄です。国際コンベンションセンター営業部の真中と申します」
2人は名刺交換を始める。
真中さんもまさかリッカビールの役員が来るとは思っていなかったようで驚いているようだった。
「今宮さんには先日もお会いしましたね。この前はゆっくりお話しする時間もなく残念でしたが」
真中さんと名刺交換を終えると、柊ちゃんは今度は私に視線を移し口を開いた。
そのセリフに驚いたのは私以外の他の人たちだ。
「えっ、今宮さんは立花本部長とお知り合い!?」
「本部長が微笑みながら女性に自ら話し掛けるのなんて初めて見た……!」
野宮さんと保科さんの2人は思わずというふうに小さく驚きの声まで漏らしている。
最初のコメントを投稿しよう!