第一話

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第一話

1. 俺の名前はユウト、今年で25歳になる。 職業は冒険者だ。 俺は元勇者パーティーに所属していたが、とある理由で追い出された。 追放理由は……まぁ色々あるんだが、一番の要因はやっぱり【固有能力】かな? 俺は自分の持つ【固有能力】をフルに活用して、 今まで戦ってきた。 そのせいか、いつの間にか仲間から疎まれるようになり、最終的には追い出されることになったのだ。 でもそんなことはどうだっていい。 俺には夢があるからだ。 それはこの世界では珍しいスローライフを送ること。 だから俺はこうして辺境にある小さな村にやってきて、 そこで静かに暮らしているというわけだ。 そして今日もいつも通り朝早く起きて畑仕事を始める。 「おはようございます」 すると一人の少女が現れた。 彼女はミハルと言い、最近引っ越してきた子だ。 歳は15歳で髪の色は黒。瞳の色も同じ黒色をしている。 身長は150センチくらいだろうか? 顔立ちはとても整っていて可愛いらしい。 胸のサイズはやや小さめだが、それがまた彼女の可愛らしさを引き立てているように思う。 ちなみに年齢は聞いていない。 なんせ彼女と出会った時は……。 いや、これ以上言うのは無粋というものだろう。 とにかく彼女はとても魅力的な女の子なのだ。 それなのにどうしてこんな辺ぴな場所に越してきたのか不思議でしょうがないのだが、 深く詮索するのは良くないと思い聞くのをやめた。 それから彼女と他愛のない会話をしながら一緒に朝食を食べた後、それぞれの仕事に取り掛かる。 と言ってもほとんどやることはないんだけどね。 まず最初に畑仕事をする。 これは毎日欠かすことなく行っていることだ。 次に家の仕事を片付ける。 掃除をしたり洗濯したり料理を作ったりなど家事全般をこなす。 もちろん一人で全て行うわけではないけど、それでも大変なことに違いはない。 そして最後に昼まで読書をするというのが日課になっている。 本を読むことで知識を得ることが出来るし、何より楽しい時間を過ごすことができる。 そういえば昨日の晩御飯の時にミハルちゃんに 好きな食べ物を聞いたらカレーライスと答えていたので今日の昼食はカレーを 作ってみようと思う。 早速買い物に行くために準備を始めた。 といっても大したものは何もないけれど。 財布を持って出かけるだけだ。 しばらく歩くと村の市場が見えてくる。 ここの市場は主に野菜類を売っている店が多い。 なのであまり面白いものはなかったりするが、 たまに掘り出し物があったりするので油断はできない。 特に今は夏真っ盛りということもあり色々な種類のトマトや きゅうりなどが売っているようだ。 とりあえず適当に見繕うことにした。 家に帰ってからは夕食の準備を始めていく。 カレーを作るのは初めてだったので少し手間取ってしまったが何とか完成させることが出来た。 味の方はまぁまぁといったところだと思う。 食事を終えた後は食器洗いをしてお風呂に入ることにする。 今日は特に疲れることもなかったし、明日に備えて早めに寝ることにした。 次の日の朝。 俺はいつものように朝の支度を終えて畑に向かう。 今日は何を作ろうかと考えていると家の方から声が聞こえてきた。 「あのーユウトさんいますか?」 ……ん? 誰の声だろ? 聞いたことのない声だ。 それになんか聞き覚えのあるような気がしないでもないぞ……まあいいか。 「はい! ここにおりますよ!」 俺は元気よく返事をした。 すると扉が開き一人の女性が入ってきた。 …………えっ!? ちょ、ちょっと待ってくれ!! まさかとは思っていたけど本当に来ちゃったのかい? 嘘だよね? 冗談だと言ってくれよ神様ぁぁぁぁぁぁ! 「おはようございます」 そこには俺の予想通りの人物がいた。 彼女は笑顔で挨拶してくる。 俺は動揺を隠すことが出来ず、ついどもってしまう。 「あ、ああ、おはようございます……」 「どうかしましたか? なんだか様子がおかしいですけど」 彼女は心配そうな顔をしている。 そりゃそうだ。いきなり知らない男が挙動不審な態度を取ったんだから当然の反応と言えるだろう。 しかしこのまま黙っていても仕方ないので俺は勇気を振り絞って口を開いた。 2. 「すみません。あなたの名前を教えていただけないでしょうか」 「私ですか? 私はミハルといいます」 やはり俺の記憶通りだったか……。 でもどうして彼女がこんなところに? そもそもどうやってこの村に来たんだろう? 疑問が次々と浮かんでくる。 すると彼女は俺の心を読んだかのように答えてくれた。 「実はですね、私の【固有能力】を使ってここまで来たんです」 【固有能力】だと? ということはやっぱり彼女は勇者パーティーの一人なのか。 一体どういうことなんだろうか? 俺の頭の中は混乱状態に陥っていた。 すると彼女は説明を続ける。 「私の能力は転移魔法なんですよ」 「転移魔法だって!?」 俺は思わず叫んでしまった。 すると彼女は驚いた表情を浮かべている。 そりゃ驚くわな。普通はそんな反応になるはずだ。 でも、それよりも気になることがある。 「じゃあさっきから感じるこの気配はもしかして君の魔力によるものなのか? それともこの村に何かあるのか? というか君はなぜこの場所を知っているんだ? 教えてくれないか? 頼む!!」 俺は必死になって彼女に質問をぶつけた。 すると彼女はゆっくりと話し始めた。 どうやら彼女は俺が追放された後に仲間と共に魔王を倒したらしい。 そしてその後、仲間たちと別れ、一人で旅をしていた時に偶然、この村に立ち寄ったのだと言う。 そこで彼女は村人たちから元勇者の話を聞くことになる。 そしてその話を詳しく聞くうちに、どうしても会いたくなったのだという。 そこで彼女の【固有能力】を使い、ここへやって来たというわけだ。 なるほどそういうことだったのか。それなら納得だ。 それにしてもすごいな。 彼女はたった一人で世界を救ったというわけだからな。 改めて彼女の凄さを実感した瞬間であった。 それから彼女は自分のことを色々と語っていく。 まず彼女は今年で16歳になるということ。 好きな食べ物は甘いもので嫌いな食べ物は特にないということなどだ。 次に彼女の趣味は絵を描くことだということ。 これは意外だなと思った。 見た目は大人びているのに中身は結構子供っぽいのかもしれない。 そして最後に彼女はこう言った。 「これからよろしくお願いしますね。ユウトさん♪」 こうしてミハルちゃんとの奇妙な共同生活が始まったのである。 それからというものの、彼女は毎日のように家に来るようになった。 最初は戸惑っていたものの次第に慣れていき今ではすっかり仲良くなっている。 ミハルは家事を手伝ってくるようになった。 正直助かっているので感謝しかない。 それに彼女は料理が得意らしく、 時々作ってきてくれることもある。 ちなみに今日はハンバーグを作ってきてくれた。 とても美味しかったのでまた食べたいなと思っている。 さて、そろそろ仕事に戻るかな。 畑仕事が終わったので次は家の掃除を始める。 掃除機をかけて雑巾がけをする。 それが終われば洗濯だ。洗濯物を干して終わり。 これが一通りの作業となる。 後は昼まで読書をして過ごす。 ちなみに今日読んでいるのは恋愛小説だ。 こういうジャンルの本はあまり読まないのだが、たまにはいいだろうと思い買ってきた。 内容は身分違いの女性と男性の恋の物語だ。 二人は紆余曲折を経て結ばれるという内容になっている。 読み終えた後はとても良い気分になった。 そして昼食の時間になり、ミハルと一緒に食べる。 その後は買い物に行く。 3. 今日は何を買うか迷うが、結局いつもと同じものを買ってしまう。 そして家に帰ると読書をする。今日読む本はこれだ。 タイトルは【ダンジョンに潜る冒険者たち】だ。 この本は主人公が様々な困難を乗り越えながら成長していく物語になっている。 とても面白い作品なので是非読んでみて欲しい。 「ふぅ、今日も良い一日だったなぁ」 俺は満足感に浸りつつ眠りについた。 翌日、いつものように朝早く起き、畑に向かう。そしていつものようにミハルちゃんと出会う。 「おはようございます。ユウトさん」 「ああ、おはようミハルちゃん」 ミハルちゃんは微笑みかけてくる。とても可愛らしい。 俺は照れ隠しをするように視線を逸らし、畑仕事をする。 しばらく作業をした後、休憩するために一旦家に戻ろうとしたその時、 「あの、少しお時間よろしいでしょうか?」 と、彼女に声をかけられた。 「うん、大丈夫だよ」 「ありがとうございます。ではこちらに来てください」 「わかったよ」 俺はミハルちゃんについていく。 そして着いた先は村の外れにある森の中だった。 そしてミハルちゃんはおもむろに口を開く。 「実は私、あなたに謝らなければならないことがあります。 実は昨日あなたの過去を調べさせていただきました。ごめんなさい」 彼女は申し訳なさそうにしている。 まぁ確かに調べたくなる気持ちはわかる。 俺だって逆の立場だったら同じ事をしていたと思うし。 なので俺は気にしないで欲しいと伝えた。 すると彼女はホッとしたような顔を見せた。 「そう言ってくれて良かったです。 これで心置きなくお話しできます」 ……ん? 何やら雲行きが怪しくなってきたぞ。 一体何を言われるんだろうか? まさか俺の秘密がバレてしまったとか? いやまぁそれはないよな。 仮にそうだとしても、わざわざこんな場所に連れてくる必要はないはずだ。 ということはやっぱりアレのことなんじゃないのか? 俺は覚悟を決めた。 「単刀直入に言いましょう。私は、いえ私たちは貴方の力になりたいと思っています」 ………………えっ? 予想外過ぎる言葉に俺は呆然としてしまった。 するとミハルが続けて言う。 「私たちのことはもう知っていると思いますが一応自己紹介をさせてください。 私は勇者パーティーの魔法使いを務めていました。名前はミナと言います。年齢は15歳です。 好きなものは可愛いものと甘いもの。 そして嫌いなものは辛いもの全般です。 特技は魔法を使うこと。 苦手なことは運動です。 あとは……えっと……とにかく頑張りますのでよろしくお願いします!」 彼女は頭を下げてきた。 俺は慌てて返事をした。 「あぁ、そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ。 俺はただの村人ですし」 「でも……」 ミハルは不安そうな顔をしている。 俺は安心させるように笑いかけた。 「本当に大丈夫だから。それに俺の方こそ君たちに迷惑をかけてしまうんじゃないかって思ってるんだ」 「そんなことありません! 私はユウトさんがどんな人なのか知りたいんです。 それに困った時はお互い様だと言ったのはユウトさんの方ではありませんか」 「……そうだな。俺が間違っていたよ。じゃあお願いしようかな」 「はい! 任せてください!」 ミハルは満面の笑みを浮かべている。 こうして俺たちは協力関係を結ぶことになったのであった。 あれから数日が経過していた。 俺はミハルちゃん達と共に行動することになった。
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