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龍介という男
龍介の会社の株価は日を増すごとに上昇していた、家へきてふざけている龍介からは想像できないくらい仕事はできるやつだと思う。
だからこそ家へきて自分を飾ることなく、過ごせることが楽しくて仕方がないと話す。
夜の街へ出かけることもなくなって、平日も仕事が終わればすぐに帰宅していた・・・・・と・いっても帰りはいつも遅く、俺たちよりもずっと遅れて帰っているようだった。
さすがに平日に来ることはなく、そんなとき一人で食事はどうしているのかと少し気になる。
遅くに帰宅して、誰もいない部屋で寝るまでの時間過ごす龍介を思うと切なかった。
俺たちはすっかりあいつの保護者になったような気がして、朝もたまにはいいかと食事に誘い早く帰った時はメールで夕食に誘った。
そんな俺たちの誘いに嬉しい顔でしっぽを振る大型犬のように懐いてくる龍介、俺たちより6歳も年上の男に懐かれて、仕方なしに世話を引き受ける。
3人で食事をしているときの龍介は本当に楽しそうだ。
仕事の話、社内での出来事、新しい企画の相談など、どれも俺たちを信用していることが手に取るようにわかる。
これまで仕事が終わったらどう過ごして来たのか不思議になるほど、俺たちと一緒に居たがった。
「龍介お前って仕事から帰ったら何してんの?」
「別に……」
「別にって、すぐ寝るわけじゃないだろ」
「うー--ん、でも俺母が亡くなってからずっと一人だったからな……小学校も中学校も高校も大学も…………家に帰ってもだれもいなかった。
あの頃帰ったら何して過ごしてたのか思い出さない……
留学中も勉強することが多すぎて友達を作る暇もなかったし、帰国してからはすぐにおやじの会社に入ったから、みんな俺を敬遠してるし、社長代理になったらなったで、みんな社長としてしか接して来ないし……
寂しいとか思うことも忘れてたかも・・・・君たちと逢ってからは週末が楽しくて仕方ないよ」
「龍介……ほんとお前って……早くいい人見つけろよ」
「わかってるんだけど……葵生みたいな人いないしなぁー」
「まだそんなこと言って……葵生はやらないからな」
「悠……俺は悠だけだって言ったろ」
「またそうやって俺の前でイチャイチャしやがって……」
「それがわかってて来るんだろ」
「まぁな」
全くこの男は……親しくなればなるほどいいやつだと思う。
こいつの寂しさも優しさも全部わかってくれる人が早く見つかってほしいと思った。
今週末は葵生のお兄さんと恋人の流星さんも来ることになって、5人で集まることになった。
葵生が帰ってこなかった日からすでに1か月半が過ぎ、あの時の張本人西園寺龍介も一緒に食事をすることに、紫生さんも驚いていた。
金曜日葵生の兄さんと流星さん、俺達そして西園寺が揃った。
「葵生のお兄さんですか?始めまして!西園寺 龍介です」
「あなたが葵生を拉致したんですか?悠君心配して大変だったんですよ」
「申し訳ありません」
「こちらは?」
「紫生さんの恋人の流星さん」
「始めまして」
「さすが葵生のお兄さん、どちらもイケメンですね」
「あなたも・・・・・・」
「お兄さん、流星さん、龍介食事できた」
「悠君、葵生ありがとう。いただきます」
「流星さんはビール?龍介はビールでいい?」
「あぁ~いいよ。お兄さんも飲まないんだ・・・・・・」
「そうだよ」
「流星さんっておっしゃるんですか?」
「はい」
「こちらへはよく行らっしゃるんですか?」
「余程のことがないと来ないですね、この前のようなことがあればですが・・・・・」
「あの節はご心配を掛けてすみません、僕の勝手な思いで葵生にも悠にも迷惑かけて」
「龍介もういいよ」
「仲良くなったんですね」
「まぁね、そんなに悪い奴じゃなかったんで・・・・・なんとなく、毎週逢ってます」
「それは良かった」
「葵生はもう大丈夫なんですか?」
「はい何とか・・・・・・悠さえいれば僕は安心ですから」
「龍介がイケメン好きだったら、今夜は驚きだったのにな」
「ほんとだ、こんなに美丈夫が揃うってなかなかないだろうな」
「そういうお前も相当なイケメンだけどな」
「悠だって・・・・・・人の事ばっかり言ってるけど、女子にももてるんじゃないか?」
「ないない・・・・・一回も告られたことないし、中学でも高校でも・・・・・」
「それは・・・・・・・おそらく葵生が邪魔してたんじゃないか?悠が気づかなかっただけで・・・・・・だろ?葵生・・・・・正直に言って見ろよ」
「君は余計なこと言いすぎだ・・・・・・黙って飲め」
龍介は俺達に空白の2年があったことを知らない・・・・・・俺達だって順風満帆じゃなかったんだから・・・・・・だからこそお互いがいかに大切かがわかったんだけど・・・・・・
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