引っ越してきた隣人

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引っ越してきた隣人

隣に新しい人が引っ越してきた・・・・・・・仕事から帰ると隣人だと言う男が挨拶の品を持って来た。 「隣に今度引っ越してきました、斎藤です。よろしくお願いします」 「こちらこそよろしく」 男は結構年配で企業でも役職をこなすような雰囲気を持っていた 「あんな人が来るって単身赴任かな?」 「そうかもな」 「あいつが来なくてよかったよ」 「ほんとだ」 隣の部屋の住人にはそれ以来逢うことはなかった、朝も早くて帰宅も遅いのだろうと思っていた。 そしてまた金曜日・・・・・・龍介は当たり前のように家へ来た。 最近は事前にメールも電話も寄こさない・・・・・・当然のような顔をして玄関にいる。 俺達より早く来た時は玄関の前に一人ポツンと立つ姿が意地らしい。 そのせいで金曜はなるべく早く帰るようになってしまった。 少し前なら仕事終わりにドライブがてら外食をするのも楽しみだったのに・・・・・・こいつのおかげで・・・・・・・そう思う一方でやっぱりほっとけなかった。 いつものように龍介はチャチャを膝に乗せて、食事の準備が出来るのを待っている。 テーブルに3人座ってビールを飲み食事をして、片づけが終わるとリビングへ移動して飲み直し・・・・・・毎週のパターンが決まって来た。 「あのさ、今夜は絶対泊めないからな」 「アァー今夜からはちゃんと帰るから大丈夫」 「帰るって・・・・・・飲酒運転するなよ」 「しないよ・・・・・大丈夫、心配するな」 「心配してんじゃなくて・・・・・・泊まるのはやめてくれって言いたいの」 「わかってるって・・・・・・・君たちの邪魔はしないよ」 「しないよって、散々したくせに」 「今夜からはしない」 「それなら大いに結構!」 俺と葵生は龍介の言う事を話し半分で聞いていた。 そして深夜になって龍介は立ち上がると・・・・・・・ 「じゃぁ、お邪魔しました。俺は自分の部屋へ帰ります。ご馳走様」 「おい!龍介・・・・・・帰るって・・・・・大丈夫なのか?」 「だいじょうぶ・・・・・・・じゃあな」 そう言って玄関へ行くとドアを開けて廊下へ出た、俺達は心配になって後からついて行こうと靴を履いて玄関を出た‥‥… 龍介はエレベーターと反対の方へ歩き出した。 「龍介そっちじゃない」 龍介が片手を上げた‥‥…そして隣の部屋のドアに手を掛けた。 「龍介そこじゃない・・・・・・他人の部屋だ」 龍介はポケットに手をつ込んだ、そして・・・・・・鍵を出してドアを開けた。 「葵生どういう事?」 「あいつ・・・・・・」 2人して隣の部屋へ行くと、あいつが玄関で笑って立っていた。 「俺、引っ越してきたから」 「引っ越してきたって、斎藤さんは?」 「あいつは俺の秘書、引っ越しは全部あいつにしてもらったから、お隣さんへも挨拶したって言ってた」 「おまえ・・・・・・いつからここの住んでた?」 「水曜からここに居たけど・・・・・・・気が付かなかった?」 「知る分けないだろ」 「これでいつでもお邪魔できるな、朝ご飯も一緒に食べようか?」 「断る・・・・・・悠行こう」 「葵生・悠これからも仲良くしようぜ」 あいつはそう言うと無邪気に笑った。 「葵生あいつほんとに引っ越してきたんだ」 「何考えてんだか」 「まぁーそのうち飽きて元のマンションへ帰るんじゃないか」 「だろうな」 俺たちは贅沢な育ちの気まぐれだろうと思っていた……もともとの豪華なマンションはそのままで俺たちとの一時的な気まぐれ……そう思っていた。
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