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葵生との毎日
以前と同じように葵生と一緒の毎日が始まった、葵生はこれまで離れていた時を取り戻すかのように俺といつも一緒にいたがった。
勿論俺だって離れている間、自分から無視していたとはいえ、逢いたかったし話がしたいといつも思っていた。
今は前と同じようになれたことが信じられないほど嬉しくて、朝起きた時には夢じゃないかと心配になるほどだった。
1ヶ月が過ぎて、俺の毎日は変わった・・・・・朝起きてトイレに行ったら、顔も洗わないで葵生の部屋へ行く、葵生の部屋で顔を洗って歯を磨いて朝ご飯を食べる。
葵生の部屋には俺の物がどんどん増えて、歯ブラシもマグカップもお箸も茶碗や皿まで何でもそろっている。
自分の部屋は風呂に入って寝るだけの空間になってしまった、俺としてはすごく嬉しい。
なんならこのまま一緒に住みたいくらいだ、寝るのだって小学校とか中学とかまではどっちかの家に泊まって一緒に寝てたんだから、今更一緒に寝ることのなんの抵抗もないはず・・・・・・
大学まで並んで登校する、まるで中学生のころに戻ったようで嬉しい。
葵生と一緒に居るだけですべてが嬉しかった。
葵生の学部は俺の校舎のある場所よりもずっと離れている、葵生は俺と別れてから15分ほど歩かなければならない。
本来なら俺とは別のルートを通ればも少し短い距離ですむはずなのに、いつも俺と同じ道を歩いていく。
ランチは時間的に一緒は無理だからって言ってもしばらくは諦めきれない顔をしていた。
俺だって一緒がいいに決まってる、だけど無理なんだからしょうがないじゃん。
最近の葵生は片時も離れようとしない、そんなに俺の事が心配なのかと思ってしまう。
俺があいつにした事が今になってあいつの心を苦しめることになっているのかもしれない。
俺が絶対お前から離れないってわかってもらうまでは何があってもあいつの希望通りにするつもりだ、それが俺のあいつにした事への償いだと思っている。
小学校に入学したころあいつは学校へ行くのが嫌でいつも俺があいつの手を引っ張って登校していた、そのうちに少し慣れてきて嫌がらなくなったけど、それでも学校に着くまで俺の手を離さなかった。
小学校の高学年になってからは手を繋ぐ事もなくなったけど、朝は必ず俺の家へ迎えに来て一緒に通学した。
中学になってもそれは変わらなくて、朝は必ず迎えに来てくれた。
そのころには葵生の方が俺より背も高く身体つきもデカくなって、一緒に歩いても歩幅が違って俺があいつの後をついて行くみたいになったけど・・・・・。
高校のバスケ部に入った時も俺はあいつの後ろ姿ばかりを見ていた、走っても泳いでも葵生はかっこよくて俺だけを見てほしいといつの間にかそう思っていた。
葵生は俺のもの・・・・・誰にも渡したくないと考えるようになった。
結局それがあの告白になったんだけど・・・・・・
バスケの試合であいつがジャンプしてボールを受け取った時、相手チームの奴が足を引っかけてあいつが転倒した。
咄嗟に俺はコートに飛び込んで倒れているあいつを抱きかかえた、気を失って目を閉じたあいつがこのまま目を開けなかったら・・・・・そう思っただけで涙が堰を切ったように流れ出して、救急車に乗っている間中生きた心地がしなかった。
検査を終えてもまだ目を開けないあいつの側で、一晩中手を握って顔を見ていた。
いつのまにか寝てたけど、顔に触れる気配で目が覚めた時、俺を見つめていたあいつと目が合った。
「悠大丈夫か?」
「うん」
「よかった」
「何言ってんだ、お前が怪我したんだろ俺に大丈夫かって、なんだよそれ
俺咄嗟に自分が怪我したのかと勘違いしたじゃねーか」
「悠はずっと側にいてくれたんだ」
「当たり前だろ、お前が目を開けないから・・・・・心配で・・・・・心配で・・・・・もう大丈夫なのか?」
また俺の目からは涙が溢れだしていた、まったく涙もろいってカッコ悪すぎる・・・・・・あの時はそう思っていた。
でも今でもやっぱり同じ気持ちになると思う、お前に何かあったら・・・・・・そう思うと一瞬でも離れたくない。
きっとお前も今そんな気持ちなんだろうな。
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