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俺の後悔
今夜一緒にいたいと言った葵生の気持ちを考えると、無碍にはできなかった。
俺は一旦自分の部屋に帰って風呂に入って葵生の部屋へ行った、葵生は風呂から出たところでタオルで髪を拭いていた、葵生に椅子に座るように言ってドライヤーを手に葵生の髪を乾かした。
中学生まではしょっちゅうどっちかの家に泊まってこうやってお互いの髪をドライヤーで乾かしていた事を思い出す。
あの頃はまだ葵生の事が好きだとは言っても、それはただ友達として気が合うとか一緒にいて楽しいとかの好きだった。
それが高校になって葵生が女子から告白されるのを聞くたびに、嫌な気分になって女子と一緒に入る葵生を見たくないと思うようになっていた。
高校生になって俺はやっと自分の気持ちが分かった、葵生が好きだと・・・・・友達とは違う好き。
それがどうゆう意味なのか、幼馴染でも親友でもなくずっと俺とだけ一緒に居てほしいと思う好きだった。
葵生に知られたくないと思う一方で、同じ気持ちだったら・・・・・と・思う気持ちも大きくなってあの日告白をした・・・・・頭の中は自分の想いを打ち明けることに精いっぱいで、余裕のない俺は葵生が笑ったと思いこんでしまった。
今こうしてあの頃のように葵生の髪を乾かしていることが、夢のように嬉しい・・・・・葵生とは2度と気持ちが離れたくないと思った。
ドライヤーを手にそんなことを考えていると、葵生が俺の手に触れた。
「悠もう髪乾いてるよ、何考えてたんだ?」
「いや、中学の頃はよくこうやって髪乾かしてたなぁって思いだしてた」
「そうだったね、あの頃から俺は悠の事が好きだった」
「あの頃って・・・・中学とか?」
「いや、小学生からだったかも・・・・・いつも悠が側にいて手を繋いでくれるのが嬉しくて、だから学校へも行ってたんだ」
「ほんとか?それにしては中学のころには女子から告られて喜んでたくせに」
「それは・・・・・悠が悪い」
「なんで俺?」
「だって・・・・・俺が女子と話してても、頑張れとかいいなぁとかしか言わないから、わざと女子と付き合ってみたり、一緒に帰ったりしてたんだけど」
「わぁ、お前嫌な奴・・・・俺がどんな気持ちだったかも知らないで」
「まさか、悠が俺の事好きなんて思ってもいなかった。
それがあの日悠に好きだって言われて・・・・・返事をする間もなくお前は出て行って、その後はずっと無視されて・・・・・意味わかんないし」
「悪かったって・・・・」
「悠俺ずっと好きだったんだよ」
「うん、俺も同じ」
何度何度も俺たちは自分の気持ちを相手に伝えあった、学食で偶然逢ったあの日からもう何回好きだと言っただろう・・・・何回確認してもまだ不安が残る、それは長い事無視していたからだと分かっている。
あれほど長い日々自分の気持ちを押さえ込んで葵生を無視していた自分の頑固さが嫌になる。
葵生は訳も分からず俺から無視され続けて・・・・・・それを考えるとどう言って謝っても許されないと思った。
人の気持ちを弄んだそんな罪悪感が沸き起こる。
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