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葵生とランチ
通常昼は社食で食べる事にしている、だが外回りの時は適当に見つけた店で食べる、行った先で適当に店に入りおすすめのランチを食べたり、取引先の人と一緒に食べたり・・・・・。
今日は偶然にも葵生の事務所の側まで来た、葵生もそろそろ昼を食べるころだろうとメールを送る。
「近くにいるけど一緒にランチできるか?」
「すぐ行く、何処?」
「ビーフ100%ハンバーグって看板出てる」
「わかった」
10分ほどで葵生が来た、店はランチを食べる客で混雑していたが幸いにも1席開いていた。
そこに座ってメニューを見るとランチはハンバーグのみになっている、ハンバーグの専門店なのか?
「葵生ハンバーグしかないけどいい?」
「もちろん、この店はハンバーグで有名なんだから、それ以外はないよ」
「そうなんだ」
俺たちが席について10分、ジュージューと美味しそうな音を立ててアツアツの鉄板に乗ったハンバーグが来た。
ふっくらと盛り上がったハンバーグは熱い鉄板の上で肉汁を出しながら、今まさに焼いてる途中だといわんばかりにいい匂いをさせて食べられるのを待っていた。
「すげぇ~うまそう~」
「すごいな」
ハンバーグにナイフを入れた瞬間ジュワッと溢れた肉汁に胸がときめく・・・・・さすがはハンバーグ専門、香りも見た目もうまそうだ。
「わっ!最高こんなハンバーグ食べたことないかも、事務所の近くにこんな店があっていいな」
「知らなかった、今日初めて来た」
「へ~マジでうまい」
悠は肉好きだもんなと葵生に言われて嬉しい。
自分の好きなもの嫌いなものを葵生が知っててくれるのが嬉しくてたまらない・・・・・そういえば大学で再会したとき葵生が料理を作ってくれたことがあった。
あの時も「悠の好きなものを作る」って言われて、そんなものを葵生が知っていることを不思議に思ったことがあった。
あの時葵生が作ってくれたのは餃子だった・・・・・中学の時俺が葵生の家で食べた餃子を好きだといったことを覚えていたから・・・・・そう言った。
葵生は俺のことならなんでも覚えてるって言った。
中学のころ葵生のことを好きだと認識してからは、そばにいるだけで掌が汗で濡れるほど緊張していた。
好きだと言う気持ちを悟られたくなくて、いつも友達の顔をして平気なふりを続けた・・・・
騒がしい女子より、無口で優しいお前のほうがずっと好きで一緒にいるだけで胸が高鳴った。
自分の恋愛と好意と憧れ、純情なあの頃の俺は葵生に夢中だった。
ハンバーグを食べながらなぜか気持ちが昔に戻った・・・・・
「ゆう・・・・悠・・・・」
「あっ?・・・・なに?」
「何って・・・・・何考えてた?」
「いや別に、ハンバーグがおいしくて・・・・・気が遠くなった」
「また、余計な事思い出してただろう?」
「違うよ」
「悠はわかりやすいんだよ・・・・俺のどの言葉に反応した?」
「お前ってホントすげー」
「やっぱり……」
ランチを終えて葵生は事務所へ俺は営業先へと向かった、この後は脇課長のいる職場だ、また猫談議で盛り上がりそうだと顔が緩くなる。
何も特別なことのない毎日が当たり前のように過ぎていく、葵生と一緒の生活そしてそこに加わったチャチャの存在。
部屋にはチャチャがいて葵生がいて、一緒に食事をして寝るのも起きるのも一緒・・・・・あの頃そんな日が来るとは思ってもいなかった。
一緒に住むなんて想像したこともかった、ただそばにいたい自分だけを見てほしいと思っていた。
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