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合コンの誘い
セクハラで会社を訴えた片山 麻莉奈から電話が来たのは仕事が終わって書類の片付けを始めた時だった。
早く帰りたくて急いでいるときに携帯が鳴った・・・・・
「浅見さん、お疲れ様です。片山です、今よろしいですか?」
「お疲れ様、何か?」
「実はお願いがあって、よかったら少しお時間いただけますか?」
「これから?」
「はい出来れば・・・・」
「わかりました」
「じゃぁ、駐車場でお待ちしてます。すぐ終わりますので・・・」
エレベーターに乗って従業員用の駐車場に行くと彼女が待っていた。
俺を見ると手を挙げて合図をした、セクハラで訴えた会社に現れるとは・・・・・そう思った。
だが彼女の顔はそんなことは微塵も思っていないようだ・・・・・
「浅見さん、急にすみません。実は今度合コンするんですけど、よかったら来ていただけないかと思って・・・」
「合コン?」
俺はこれまで大学時代を含め合コンに参加したことはない、葵生と再開してからそういうう付き合いは断っていたし就職してからも何度も断っていたために最近は誘われなくなったと言っていい。
「悪いけど、俺合コンにはいかない主義なんだ・・・・ごめん」
「それは知ってます、私が在籍しているときもいつも断ってたから・・・・でも今回だけ、男性を2人連れて行くってことになってて・・・・・」
「でもなぁ・・・・・どうゆう人たちの合コン?」
「私が勤務してるエステサロンなんですけど、女子しかいなくて・・・・男性と知り合うきっかけがないので合コンしよってことになって、それで知り合いとか兄弟とか親戚とか誰でもいいから、男性2名を連れて行くっていうのが条件なんです。私知り合いはいないし・・・・・だから・・・・浅見さんとこの前の弁護士さんにお願いしよと思って・・・・」
「弁護士って?セクハラ裁判の?」
「そうです」
「もう話ししたの?」
「はい」
「返事は?なんて?・・・・」
「行ってくれるっておしゃっていただきました」
「・・・・・弁護士さんほんとに行くって言ったの?」
「えぇ、お昼電話してお話したらいいよっておっしゃっていいただけて、凄く嬉しくて」
「・・・・・・・そうだね」
「あとは浅見さんさえ行ってくだされば・・・・・」
葵生まで誘う気かと驚いたが、葵生がまさか合コンに行くと答えるはずがない・・・・・
「少し時間もらえる?」
「はい、合コンは来週金曜なので今週の金曜までにお返事ください」
「わかった・・・・もし俺が断ったら?」
「弁護士さん一人でも仕方ないと思ってます。それに弁護士さんが参加ってなればみんなのテンション上がるし、一人でも許されるかもしれません。でも浅見さんには是非参加してほしいです」
彼女のしたたかさを感じるとともに、葵生のことを考えていた・・・・・
葵生が合コンに行く?
彼女と別れてすぐに車で葵生の事務所まで行くと、葵生が外で待っていた。
「葵生ごめん待った?」
「少しな・・・」
葵生の表情はいつもと変わらない、合コンの話をするのかと待ったが、そんなことなどまるでなかったようにいつもと変わらなかった。
彼女がもし俺を誘わなかったら、合コンに葵生が参加することも知らなかったわけで、今の葵生は俺がそのことを知ってる事さえ知らない・・・・・
葵生は俺に内緒で合コンに行くつもりなのか?
なぜ行くと返事をしたのか、葵生の気持ちがわからなかった。
これまで合コンに参加したことはないと思っていたが俺が知らなかっただけで、実は何度か参加してたとか?
これまで一度も考えたことはなかった、遅くなるのは仕事だけだと思い込んでいた。
お酒を飲まない葵生がもし合コンに参加して遅く帰ったとしても俺は気が付かないだろう・・・・
葵生が合コンに誘われたと言ってくれるのを待った。
断れなくて行くことにしたならそれはそれで構わない、ただ行くなら行くと言ってほしい。
何も言わないことで不安が一気に広がった・・・・・
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