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葵生への思い
それから2日経っても3日経っても葵生は何も言わなかった。
彼女は金曜までに返事をくれと言っていた、その金曜が明日になって俺はどうしようかと思いを巡らせた。
もし合コンに俺が参加したら・・・・・俺を見た葵生はなんて思うだろう。
合コンに参加している葵生を見たくなかった、だが・・・・・合コンで葵生がどんな顔をするのか見たい・・・・・笑顔で女性たちと話す葵生・・・・・
ワイワイ賑やかに話す葵生が想像できなかった・・・・・もしそこで好みの子がいたら、その子と意気投合したら・・・・・
二人だけで合コンの後飲みに行って、その後・・・・・・妄想は広まるばかりで止められなかった。
妄想は次第に現実のように思われ・・・・・合コンの後気に入った女性と歩きながら立ち止まってはキスをしそのまま肩を抱いてホテルへ行く。
仕事の間も頭から離れない・・・・・考えれば考えるほど胸は締め付けられ涙がにじむ、零れ落ちそうな涙を目を閉じて必死で止めた。
明日は金曜日、彼女になんて返事をしようかと迷った、行くことにして葵生と対面するか?
行かないと返事をしてこっそり会場に行って葵生の様子を見るか?
どっちもあまり気が進まない・・・・・葵生の不貞を見るようなものだ。
俺の知らない葵生・・・・・一緒に住んでずっと信頼していたその信頼が音を立てて崩れていく・・・・・そんな気がした。
葵生と大学で再会してから、ずっと幸せだった・・・・だがそう思っていたのは自分だけだったのかもしれない、葵生は女性と付き合いたいと思っていたのだろうか。
女性と付き合い結婚をして子供を持ち幸せな家庭を築く葵生・・・・・それが理想だと思う、職場でも家族からも祝福される関係・・・・・公にできない自分なんかよりずっといいに決まっている。
そう思うと合コンへ行く葵生を止めることも、自分が参加して葵生の邪魔をすることも出来ない・・・・・行かないと決心した。
片山さんに電話をして参加できないと断った・・・・・
仕事が終わって葵生を迎えに行く、合コンは来週だ・・・・・今夜が最後の週末になるかもしれない。
「葵生おつかれ」
「おつかれ、買い物して帰る?それとも食べて帰る?」
「買い物して帰ろう、家でゆっくり食べたい」
「うん、何作ろう?食べたいものある?」
「そうだな・・・・・葵生の好きなもの食べたい」
「どうした悠?なんかあった?」
「ないよ・・・・葵生の手作り久しぶりだから・・・・」
俺が「別に」・・・・そう返事をすると葵生はきっと俺が何か考えていると気づく・・・・だから俺は「別に」・・・・とはあえて言わない。
葵生に今問い詰められたら、きっと涙が溢れ出す・・・・・葵生が俺に内緒で合コンに参加しようとしている、そのことを俺が知っている・・・・それだけは知られたくなかった。
来週金曜日、葵生が合コンに参加して好きな子ができたら・・・・・俺は・・・・・葵生を手放す。
喜んで送り出すことはできないが、それでも葵生が幸せになるなら、それは俺にとっても幸せだから・・・・そう思うことにした。
スーパーで一緒に買い物をする、カートを押して食材を入れて俺のためにビールも買ってくれる。
今夜は葵生の手料理を食べてビールを飲んで・・・・・・いつもの週末と同じように俺を抱くのだろうか?。
葵生が何を考えているのか分からなくなった・・・・・彼女が欲しいと思っていながら俺を抱く、彼女が出来たらどうするつもりだろう・・・・・俺とはこのままで彼女とも付き合って・・・・・そんな器用なことが葵生にできるのだろうか?
それとも俺と別れるのか・・・・・俺と別れて彼女と恋人同士になる葵生・・・・・俺に向けられていた優しさも愛撫もキスも・・・・・全部彼女のものになる。
キッチンで料理をする葵生の後姿を見ながら、見えない相手に嫉妬する。独占欲で焦る気持ちを持て余して涙が溢れ出した、唇をかんで嗚咽を抑える。
「葵生先に風呂に入る・・・・」
「あぁ」
服を脱ぎながらこぼれる涙を抑えられなかった、熱い湯につかって何度も顔に湯をかけた。
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