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俺!またやらかした?
とぼとぼと重い足を引きづりながら自分の部屋の前まで行く・・・・チャチャが待ってると思うと少しだけ寂しさが紛れた。
鍵を出してドアに差し込む、ガチャリと音がして解錠するとドアの取っ手を掴んでドアを引く・・・・・いつもより重く感じた。
真っ暗な玄関を過ぎてリビングのドアを開ける、誰もいない部屋は暗いはず・・・・なのに部屋の真ん中にオレンジ色の灯りが見えた。
一体あの灯りは何だろうと目を瞬く・・・・・どうやらロウソクの灯りの様だと分かった。
その時いきなり聞こえた・・・・・
「♪HappyBirthday♪悠」
「エッ・・・・・・・ハァ・・・・・・エッ・・・・・なに?」
「悠今日誕生日だろ、おめでとう!ほら!ロウソク吹き消して」
「お・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の?誕生日?フゥ~~~ッ」
ロウソクの火が消えた瞬間、部屋の灯りが付いた・・・・・・
リビングのテーブルには真っ白なクロスが掛けられ、中央にはケーキその横にはブルーのリボンが掛けられた白い箱、その周りには小降りの皿にいつもの倍の料理の数々・・・・・そして冷やしたシャンパンにグラスが二個。
これは・・・・・・
「葵生これ・・・・・・」
「やっぱり忘れてた、今日11月20日は悠の誕生日だろ。26歳おめでとう」
「だって・・・・・・葵生今夜は・・・・・・」
「遅くなるって言ったのは嘘、今日は昼から休みを取って買い物して料理して悠の誕生日の準備をしてたんだ・・・・ビックリした?」
「うん・・・・・・合コンは?」
「合コン?何言ってんだ・・・・・それよりその箱開けて」
「うん・・・・プレゼント?」
白い箱を手に取ってブルーのリボンを解く、中から出てきたのは俺が葵生の誕生日にプレゼントしたあのキーホルダーと同じものだった。
俺と葵生の名前が刻印されてその間には♡が入っていた。
「それお揃いで持ちたかったから・・・・・」
「葵生・・・・・ありがとう」
「俺の作った料理食べて、お祝いのシャンパンも開けよう」
「うん」
信じられない展開でさっきまでの泣きたくなるような寂しさが嘘のように霧散した。
俺は一体何を勘違いしてたんだろう・・・・・葵生が合コンに行くと思いこんでいた。
片山さんの言葉は嘘だったのだろうか?
確かにセクハラ裁判の弁護士さんが合コンに参加すると言っていた・・・・・それを何の疑いも無く信じてしまった。
この1週間は何だったのだろう?
葵生が女性を好きになって俺とは別れると本気で心配していた・・・・・
葵生を信じていなかった俺に天罰が下った1週間だったとしか思えなかった、この事を葵生が知ったらどう思うだろう?
俺の淫らな妄想・・・・・葵生が女性を抱くと想像しては泣き、別れてしまうと思いこんでは風呂場で泣いた俺・・・・・
食事が終わってシャンパンを飲んでいい気分で葵生を見る・・・・・俺の為にこんなサプライズを考えてくれた葵生・・・・・嬉しくて気まずくて恥ずかしい。
「葵生あのさ・・・・・1週間ぐらい前片山さんから電話来なかった?」
「そう言えば来たよ」
「なんて言ってた?」
「う~ん!合コンがどうとかって言ってた、男2人連れて行かなきゃいけないから、俺にも行ってくれって」
「それでなんて返事した?」
「行けないって言ったらそうですかって言って切れたけどそれがどうした?悠にも来たのか?」
「アァ~来たけど断ったよ」
片山さんは俺と葵生の関係は知らないが俺を参加させようと弁護士さんも行くと嘘を言ったのだろう、一人は決まったけどもう一人必要だと思わせるために・・・・・・その嘘をまんまと信じて葵生を疑った俺・・・・・
葵生には絶対知られたくない・・・・・昔から何も変わっていない、告白した日も葵生が笑ったと勘違いして時間を無駄にしたのに・・・・・自分の愚かさにつくづく嫌気がさす。
先週の金曜とは正反対の天国のような幸せな週末だった。
葵生がそばに居てくれて本当に幸せだ、絶対離さない・・・・・誰にも渡せない大切な恋人だから・・・・・
さっき車の中で泣いた俺は今幸せに泣いていた。
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