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自分の愚かさを実感する
どうして俺はあの時葵生に聞かなかったんだろう、たった一言「片山さんから合コンの誘いが来た?」
そう聞くだけでよかったのに……
聞かないどころか他人の言うことを真に受けて、葵生を疑っていた・・・・・なぜ合コンのことを内緒にしてるのか?……どうして参加するって言わないのか?
挙句の果てにみだらな妄想をしては勝手に落ち込み泣く俺……みっともなくて恥ずかしすぎる。
葵生に合わす顔がない……昨夜は思ってもいなかった誕生日のお祝いまでしてもらって、しかも十分すぎるほど愛してもらった……
葵生が俺の好きなものをいっぱい作って待っているとは知らず、駐車場で泣いて部屋まで重い足取りで戻った。
部屋に入ってオレンジ色のローソクの明かりを見てもまだ、気が付かなかった。
自分の誕生日を忘れていた。
食事を始める前にすでに俺は我慢できずに葵生に抱き着いた、広くてたくましい葵生の胸に縋り付き深く息を吸い込む……いつもの葵生のにおいに包まれて幸せを胸いっぱいに感じた。
大好きな葵生のにおいに包まれただけで、体が震えるほど昂った。
先週の金曜は最後の週末などと勝手に思って、泣きそうな気持を隠して葵生に抱かれた。
だが昨日の夜は胸の黒い霧も晴れ、それだけでも幸せなのにケーキにプレゼントまで……
葵生に抱かれながら違う意味で泣きそうだった……最近俺は泣いてばっかりだ……
朝から葵生はチャチャの世話をしている、トイレの砂を掃除をして食事と水を交換した後膝に抱いて背を撫でる。
朝の柔らかな日差しが窓から差し込み、寝ていたチャチャが顔をあげる。
なんでもない風景の中に葵生とチャチャがいて、明るい秋の日差しが差し込むリビングでのんびりとした休日を満喫するこれこそが俺と葵生の思い描いた幸せだ。
そういえば葵生が女性といるところを見た時も一言聞けばいいのに、自分をごまかし葵生を疑り勝手に落ち込んで胸をかきむしるほど悲しい思いをした。
葵生を信じ切れずに飲んで深夜に帰り、葵生に絡んでウジウジと泣きながら思いのたけを打ち明けた。
愛する人なのに信じられない自分が悪い……
葵生を疑るなんてもう二度としないと自分自身に誓った。
今日の夕食はレストランを予約したと葵生が言った、俺の誕生日のディナーだって……金曜の夜に手作りの料理でお祝いしてくれたのに……
今夜は特別なディナーだと言った。
夕方になって俺達は休日にもかかわらず、スーツを着用・・・・・こんな時葵生は最高にカッコいい、俺よりは少し高いスーツにもかかわらず葵生が着ると最上級のスーツに見える。
車を駐車場から出して、今夜は葵生が運転をする。
場所はなんと国内最上級のホテルにあるレストランだった。
足を踏み入れるのも緊張する、葵生が名前を告げると恭しくお辞儀をされ個室へと案内される。
葵生と二人引かれた椅子に座り向き合う・・・・・葵生の顔が憎らしいほど素敵だ。
まさに俺に取って葵生はスパダリだ・・・・・・・
お洒落にワインをオーダーしスパークリングワインで乾杯をした後、料理を待つ。
「突き出し」とか「お通し」にあたるアミューズ・ブーシュはフォワグラとレーズンバターのサンド。
そしてコンソメスープ。
冷前菜は北海道産 帆立貝柱と柑橘類、フルーツトマトのマリネ。
温前菜が黒アワビのシャンパン蒸し 肝のソースとフレッシュフォワグラのソテー ホワイトアスパラガスと穴子。
鮮魚料理は黄アラのポワレ 生ウニ添え オマール海老のソテー アメリケーヌソース。
次々に出される料理に舌鼓を打ちながら葵生の顔を見る、目を細めて俺を見た後、ゆっくりとした仕草でフォークを口に運ぶ・・・・・何をやっても様になる。
メインデッシュは黒毛和牛ロース肉のポワレ。
デザートはオレンジシャーベットとフォンダン・オ・ショコラ
「悠の好きなチョコを選んだよ」
泣きそうになるのを堪えた、口をへの字に曲げ固く結んだのに鼻水が流れだした・・・・・恥ずかしすぎる。
葵生がテーブルに置いてあった紙ナプキンを渡してくれる、鼻水を拭いて涙を拭いて、鼻をかむ・・・・・見つめる葵生ににっこりと笑って照れくささを誤魔化した。
「葵生こんなすごいご馳走始めて・・・・・俺ほんとに嬉しい、ありがとう」
「悠が喜んでくれたらそれでいいんだよ」
「葵生・・・・・・俺一生忘れないよ」
「何言ってんだ・・・・・毎年しようよ、まだ先は長いんだから一生なんて言うな」
「うん・・・・だよな」
俺は感激と感動で目は潤み涙が滲んだ・・・・・葵生は何も知らないがこの一週間俺がどんな気持ちでいたかを考えれば今こうしていることが奇跡の様に感じてもおかしくない。
こんなにも俺を喜ばせようと考えていた葵生を信じていなかった自分、この一週間の辛い思いは自業自得だと思った。
俺ってなんて馬鹿なんだ・・・・・
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