十八、祝福

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「それにしても、綺麗な金色の目ですねぇ……」  フィズはイルセンの腕に抱かれる赤子の目を見て、うっとりとした。  イルセンは嬉しそうにしながら「そうなんです」と言って頷いている。 「それに、この愛らしい顔立ち……まさに、女王陛下そっくりです。吸い込まれそうな輝く金色の瞳に、美しい黒髪……。神々も嫉妬してしまうほどの美貌がある上に、泣き声も女王陛下の美声を受け継いでいるようで、まるで小鳥の囀りのようなのですよ」  人前であるために、久々の『女王陛下』呼びに懐かしくなりながらも、ルティシータは「またそんな事を言って」と、夫の言葉を遮った。 「確かに金色の瞳だけれど、意志の強そうな目は貴方にそっくりよ。きっと、貴方と同じくらい行動力のある子なんだわ」  そう言うと、イルセンは腕の中の赤子に向けて「君は、私にもそっくりなのか」と言って、ほくほくとした顔で娘に微笑みかけた。しかし、何かの確信を得たかのような目をして、こちらに顔を向けた。 「いや、やはりこの子の愛らしさは貴女譲りだ。長年貴女を見つめ続けてきた私が言うのだから、間違いない」  そう言うと、両手の塞がるイルセンは当たり前のように、ルティシータの顔に鼻を擦り寄せた。 「イルセン、くすぐったいわ」  その様子を楽しげに見ていたフィズが「二人とも、心の中に仕舞う気もなくなったみたいですね」と言って、二人に笑いかけている。  ルティシータは、途端に表情を引き締めてイルセンからわずかに距離をとった。 「あら、お姉様。離れる必要はないわ」  すると、イルセンもその通りだとばかりに頷くと「そうだよ、ルティシータ」と言って、フィズの言葉を受けた。 「私達の仲が良ければ良いほど、皆が喜ぶのだから」
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